本作は『告白』『悪の教典』に続く、東宝「ヤバイ」映画路線の1つだろう。
ただし、その「エキセントリック」な描写が非常に表面的だ。
特に二階堂ふみの怪演を無駄にするような、演出の力量不足には心底ガッカリ。
また至る所に『ダークナイト』のジョーカーから影響を受けた場面が見受けられる。
バスを爆破しに行く白塗りメイクの女性。
病院が次々と爆破されていく様子。
刑事に2人の命を選択させる場面。
「ヤバイ」ことをしてやるんだ!という気概は分かるだけに、もっとフレッシュな描写が欲しい。
さらにミステリー映画としての魅力にも乏しい。
本作は序盤で発生するバス爆破事件の犯人探しが、物語の1つの推進力となっている。
だが、観客は犯人が女2人組だと早い段階から知ることとなる。
だからこそ、いつまでも「脳男」を疑う刑事たちが無能にしか見えない。
しまいには事件の捜査を病院の医師たちにも協力させる有り様。
真犯人は誰かという謎に対しての、情報の出しかたが下手すぎるのだ。
しかし、個人的には本作を面白く観ることができた。
それは一概に「脳男」を演じた生田斗真の魅力にある。
「脳男」というキャラクター自体が、物語の最大の推進力である大きな謎を秘めた存在だ。
だからこそ、非常に特殊なキャラクターである「脳男」のキャスティングだけは失敗できない。
そして結果的に、そのキャスティングがカチッとはまったからこそ、本作は成功したのだと思う。
生田斗真という俳優の代表作となるのは間違いない。
異常なほど均整のとれた端正な顔立ち。
鍛え上げられた肉体美。
隔世したようなクールな佇まい。
それでいて弱々しい心も内に秘めているように見える。
去っていく後ろ姿や、膝を抱え込む姿が、確かに「画」になっている。
そんな彼の「無機質な美しさ」が最大限に生かされている。
ライティングと撮影も見事だ。
彼を正面ではなく、斜めや横から撮る工夫がなされている。
それにより、彼の高い鼻によって、顔の半分に陰影ができる。
それが善悪とはっきり分け隔てられない、彼の存在そのものを端的に表している。
とにかく映画としてのルックが格好いい。
「キング・クリムゾン」の曲が使用されるエンドクレジットはその極みだ。
本作は決して完璧な作品ではない。
気になる個所は多々あり、広げすぎた大風呂敷を上手く畳めていない印象を受ける。
だが、「ビジランテもの」「ダークヒーローもの」としての面白さがある。
ラストのカタルシスに安易に逃げない点にも好感が持てる。
少なくともトム・クルーズの『アウトロー』よりは、魅力に満ち満ちた硬派な作品だ。