YLxx

ムーンライズ・キングダムのYLxxのレビュー・感想・評価

ムーンライズ・キングダム(2012年製作の映画)
4.7
ハンパないなこれ正直ウェス作品の中でダントツなのでは?と思いつつ、フレンチディスパッチクソ好きなのを思い出し、さらにアストロイドシティのカオスも思い出しウェスはなんでもできると言うことに気付かされる。

なぜ今までスルーしてきたのか本当に後悔するレベルでブチくらった。配信で見た後すぐにBlu-rayを買い見直しました。青春ものに弱いのは認めるが子供たちが緑を駆け抜ける様、二人が大地を歩き出す様それらを見るとワクワクが止まらない分で。自分も大人の階段を上るのではなく日々進化を遂げたいね。

学んだ知識を一目惚れした彼女に得意顔で語りながら駆け落ちする彼は、まだまだ子供のように見えるが彼らよりも子供な大人つまりコドオジが大量に登場するのだ。55隊長エドワードノートンが子供隊員に指導する様子は正に子供を制御する大人のポーズにすぎない。クラシックなボスの風格をもつハーヴェイカイテルも髭剃りを部下に任せ、さらには薬を持ったか聞かれる様はお弁当持ったか聞かれる小学生にしか見えないのだ。ブルースウィルス演じる警官が主人公に君は私より賢いと言って聞かせる話はこの作品そのものではなかろうか。子供と大人、大人になるとはどういうことなのだろうか。食事の時間になると叫ぶ母やシャツが出ていると指導する教師は立派なのだろうか。そんな秩序と庇護を破壊する子供たちはショーシャンクさながら檻から抜け出し、気狂いピエロさながら未開の地へ足を踏み入れる。法律を無視し結婚をし、俺はもう戦わないと叫びながら雷に打たれた主人公は神に成る。子から大人というよりもこれは進化である、世間に定められた成人や結婚とは違う完全なる人間としての成長。しかしそんな神にも現実はやがてやってくる。ウェス映画は現実にはない画を必ず見せてくれるがあくまで劇として見せることに終始する、それがこの世で生きるということでありウェスが一貫して描いている物語と現実のギャップの面白さである。よって最後主人公は彼女の両親(弁護士)に助けられることになるのである。