【夢で逢えたら】
キネ旬シアターにて。意外なほど、小気味よく楽しかった!
終盤、ヒートする歴史の逆走にはアイデアに物語が追いつけず、逆に面白さが失速していましたが、他はほぼ、心地よく堪能しました。
大きくよかった点はふたつ。
ひとつは、とにかく逃げまくる後ろ向きな話なのに、面白いこと。ジェラール・フィリップ演じるピアニスト、主人公クロードが、騒音に悩まされたのが始まりで夢の中に逃げ、すると夢にも追われて現実へと逃げまくる、という繰り返し。
ジェラールの嫌味なきへタレキャラがすんなり収まっています。音に追われた先で、サイレント映画のリズムで盛り上がる、という逆説的な構成も面白い。
もうひとつは、夜ごとの美女との夢物語が、脳科学で言われる「夢は記憶の整理」に沿っていること。皆、起きている間にどこかで会っているから、夢でも出てくるのですよね。
中でも、自分にその気がなくても、常に受けていた熱い視線が無意識に影響したのでは…と思わせるエピソードなんて、夢がありますね(笑)。
この時代はまだ、フロイト・ユングの夢分析の影響が強かったろうし、「夢は記憶の整理」説がいつ始まったのかも知りませんが、この説からの視点からだとより、楽しめますね。
美女さんたちは皆、映画だなあ、と納得できる美女ですが、新人であるマガリ・ヴァンドイユさんの可憐さにいちばん、心洗われました。
ジーナ・ロロブリジーダさんのアラブ美女も素肌を見せセクスィでしたが、フランスによる侵略戦争の中、敵国の姫君に惚れられるってあまりに能天気で笑えない。まあ夢の話なんだけどね(笑)。
あと、下町人情話で包んでいるところも、やさしいなと思いました。
<2015.7.9記>