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夜ごとの美女のくりふのレビュー・感想・評価

夜ごとの美女(1952年製作の映画)
3.5
【夢で逢えたら】

キネ旬シアターにて。意外なほど、小気味よく楽しかった!

終盤、ヒートする歴史の逆走にはアイデアに物語が追いつけず、逆に面白さが失速していましたが、他はほぼ、心地よく堪能しました。

大きくよかった点はふたつ。

ひとつは、とにかく逃げまくる後ろ向きな話なのに、面白いこと。ジェラール・フィリップ演じるピアニスト、主人公クロードが、騒音に悩まされたのが始まりで夢の中に逃げ、すると夢にも追われて現実へと逃げまくる、という繰り返し。

ジェラールの嫌味なきへタレキャラがすんなり収まっています。音に追われた先で、サイレント映画のリズムで盛り上がる、という逆説的な構成も面白い。

もうひとつは、夜ごとの美女との夢物語が、脳科学で言われる「夢は記憶の整理」に沿っていること。皆、起きている間にどこかで会っているから、夢でも出てくるのですよね。

中でも、自分にその気がなくても、常に受けていた熱い視線が無意識に影響したのでは…と思わせるエピソードなんて、夢がありますね(笑)。

この時代はまだ、フロイト・ユングの夢分析の影響が強かったろうし、「夢は記憶の整理」説がいつ始まったのかも知りませんが、この説からの視点からだとより、楽しめますね。

美女さんたちは皆、映画だなあ、と納得できる美女ですが、新人であるマガリ・ヴァンドイユさんの可憐さにいちばん、心洗われました。

ジーナ・ロロブリジーダさんのアラブ美女も素肌を見せセクスィでしたが、フランスによる侵略戦争の中、敵国の姫君に惚れられるってあまりに能天気で笑えない。まあ夢の話なんだけどね(笑)。

あと、下町人情話で包んでいるところも、やさしいなと思いました。

<2015.7.9記>
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