りっく

四十九日のレシピのりっくのレビュー・感想・評価

四十九日のレシピ(2013年製作の映画)
4.0
タナダユキは残酷だ。
人間を観る目が結構辛辣だ。
その視点こそが、自分の価値観と世間一般の価値観の乖離を浮き彫りにする。
本作で言うならば、夫の浮気相手と、父親の姉ということになる。

前半は重いテーマながらも、個性の強すぎるキャラクターの陽気さで強引に吹き払う。
でも、それは所詮カラ元気。
各々のキャラクターが抱える「陰」の部分を描く手腕が光る。
永作博美が「子供に串の刺さった食べ物を食べさせちゃいけないんだ・・・。」
とつぶやくあの瞬間。
良かれと自分が思ってやったことは、世間では良しとされていない。
この「常識外れ」が本作のキーワードだと思う。

ただ終盤の展開にやや無理を感じる。
各々の問題の解決には至っていないし、
強引に温かな目線を入れ込み、全てを「オールOK」のように丸め込んでしまう。
大宴会に血のつながった家族をわざわざ入れる必要があったのだろうか。
各々次のステージへの一歩は踏み出すが、その踏み出し方に至るまでの過程が欠如している。
「踏切り版のような人生」という括りだけでは、大風呂敷をキレイに畳めたとは言い難い。

でも、やっぱりそれでも心に刺さってくるものが確かにある。
子供がいない人生だからこそ味わえる、喜びや悲しみ。
それは「空欄だらけの自分史」になる危険性と隣合わせだ。
そもそも人生は年表の空欄を埋めるための作業なのか。
そんな問いが、観終わってからも頭の中をぐるぐると行き交う。
りっく

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