mimi

空気人形のmimiのネタバレレビュー・内容・結末

空気人形(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とても儚くて、切なくて、美しい作品だと思う。
「きれい」で始まって「きれい」で終わる、空気人形の生涯(といっていいのかわからないけど)の物語。

たしか公開当初劇場で観て、あまりの切なさに泣いてしまった記憶がある。
そのあともレンタルショップで見かけた時に借りて観たし、今回も久しぶりにまた観たくなって観た。

まず音楽が良い。
world's end girlfriendの楽曲が、儚さや切なさをさらに加速させてると思う。

そして本当にお人形のようで透明感あふれるペ・ドゥナが主演していること。

この2つが揃っているから『空気人形』の儚くて美しくて切ない世界観が成り立っているんだろうなと。

好きなシーンがたくさんある。

空気人形が心を持って、物干し竿の雨粒に触れて「きれい」とつぶやくところ。
メイド服で小さなバッグと傘を持ってちょこちょこと歩くところ。
純一にときめいた瞬間と、コスメとの出会いをきっかけになりたい自分になろうと変わっていく姿。
お台場の海に出かけた時にキラキラした瓶を拾ったシーン。
その日の帰りに自分が人形であることを思い知らされる切なさ。

空気人形の空気が抜けてしまった時、純一が空気を吹き込んであげるシーン。こんなに耽美なシーン、ほかに見たことがない。
好きな人が吹き込んだ空気が自分のなかに流れているんだってときめくことができるのは、空気人形だからこそだもんね。
そのことによって、生きてる!っていう実感が得られたから、そのあとに見た世界はすべて輝いて見えたんだと思う。

自分が悩んでひとりぼっちみたいな気持ちになってる時、ベンチで出会ったおじいさんみたいに「君だけじゃない」と言われたら、ものすごく心が救われるよね。
みんなどこか空っぽに感じているところがあるんだよなっていうのがそのあとの詩のシーンで表現されていて、ここも好き。

人形師のオダギリジョーの第一声が「おかえり」だったこと。「君が見た世界は、悲しいものだけだった?美しい、綺麗なものも少しはあったかな?」という言葉と、それにコクンと頷いた空気人形。
この二人の間に流れていた優しい時間もすごく好きだった。

でも「純一は私と同じ、心を持った空気人形なんだ」と確信したことが、最終的にあんな結末を招くなんて。
あまりにも純粋すぎて、無知で、傷口にテープを貼って一生懸命に空気を吹き込み続ける空気人形の姿の切なさといったら。

なぜ空気人形の空気を抜きたいのか答えなかった純一にはちょっとサイコパスっぽさを感じたけど、純一がそれを望んだ結果が「燃えるごみ」というのもなんだかゾクゾクした。

心を持ってから集めたキラキラしたものたちを並べてベンチに座った空気人形も、テープを少し外して純一の吹き込んだ空気を吸う空気人形も、ごみ収集所に横たわった空気人形も、全部儚くて切なくて美しかった。

私も同じ景色を見たら「きれい」と言ってしまうかもしれない。
それくらい、空気人形の最後の姿は、儚くて切なくて美しかった。

ゾワゾワするシーンも時々あるんだけど、それがあるからこそ空気人形の生き方の儚さ、切なさ、美しさが際立つんだと思ってる。
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