キラキラ恋愛学の単位を落としそうな私は少しキラキラのハードルが低そうなものを選択。
何故か昔全巻BOOK・OFFで買ってまで読んだいくえみ綾先生の『潔く柔く』を思い出し映画版を鑑賞してみることに。
実写化にあたり主演を務めるのは『曲がれ!スプーン』でお馴染みの長澤まさみと『ジョジョの奇妙な冒険』での好演が光る岡田将生。
脇を固めるのは高良健吾や波瑠、池脇千鶴など豪華。
彼らの10年前の姿を拝めるだけでも鑑賞の価値はあるはず。
お話は高良健吾演じる高校生と思われるハルタくんが事故にあったのか血を流し倒れている所から始まる。
その後長澤まさみ演じるカンナさんが街を走るシーンへ。
きりりとした表情と服装からカンナさんは仕事している年頃になっているのかと推測させられ過去と現在の時系列を手短に示す良い演出だった。
そこから「大切な人を失っても人はまた愛することができるのでしょうか…」というまさみのモノローグとテーマ曲が入りタイトル『潔く柔く』と。
せっかく良さそうと思ったのにまさみモノローグによるテーマの問いかけがダサくて勿体無い気がしましたが世界観に入るにはそこまで悪い出だしとは思わなかった。
回想の高校生の頃の彼らの様子を若い頃に観ていたらこんな美男美女の4人組どうなろうと知ったことかと切り捨てていたことでしょう。
特に幼馴染みのハルタとカンナは正式に交際をしているわけでもないのにカンナの部屋でソフトなキスを交わしたりしています。
一度や二度のことではなく高校合格の時にノリでキスをして、そこからなんとなくキスしている様です。
それをカンナは“野良猫同士のキスみたいな感じ”と解釈していました…きついです。
猫ばかにするな。
しかし登場人物に好感が持てないからつまらないと決めつけてはいけない。
この作品では身近な存在の喪失、トラウマとの対峙など普遍的なテーマを扱っているのでそこに着目すべきだと思うからです。
ネコのキスをする関係だけど付き合っているわけではないのでカンナは当たり前のように仲良し四人組のもう一人の男子マヤから好意を抱かれます。
マヤとカンナがデートを楽しんでいる頃ハルタはカンナの家に行こうとしていました。
いつもアポナシでベランダから部屋に入るのに「一応女の子の部屋なんだから来る時メールしてよ」と言われていたハルタ。
めんどくせーと言っていたのにこの日に限って自転車に乗りながらメールでこれから行くことを伝えようとしていました。
その時トラックがハルタを避けきれず…
冒頭の事故のシーンです。
カンナの元へ行こうとして轢かれ命を落としたハルタ。
元々いつメン四人の友情を大事にしていたアサミからはハルタが事故にあっている時に「二人きりで何してたのよ!許さない!」と怒鳴られます。
アサミなりに色々な感情が暴走してしまった所もあるのでしょう。
カンナはハルタの死が強いトラウマとなり大人になっても恋愛はおろかケータイのメールもできなくなっています。
“寄って来る男皆相手にしていなかった”との友人の証言もあるので、容姿端麗なカンナはいくら本人が恋愛から遠ざかろうとしても男性が寄ってきてしまっていたようです。
そんなカンナはある日岡田将生演じる赤沢禄くんとバーで出逢うのでした。
彼もまた身近な人を失ってしまった過去を持っています。
彼の抱えたトラウマはショック度が強かったですし現在の俳優岡田将生の評価の高さなど考えるとまた違った作品でこのような強烈な過去を持った人間を演じてもらいたいです。
彼のトラウマとの対峙ですが彼が失った近しい人物の遺族にあたる人物(池脇千鶴)が出てきてロードムービーのような形になる所があります。
尺の都合もあるので短くあっさりしていて勿体ないですがやっていること自体はそこまで悪くなかったような。
しかし日テレ映画らしく強引に感情を誘導する為の音楽やAIかと思うような子役のテンプレ演技が絡んできたり、結局は真面目に観ない方が良かったのかなと残念。
蓋を開けてみればキラキラとかではなく日テレ映画の悪い部分が出ていた。
学生時代にカンナを強く責めたアサミとカンナの再会など(特にカンナは久しぶりに楽しいお酒だったのであろうと感じる長澤まさみの演技はさすがでした
)原作の見せ場は削らずに頑張っていたと思うのですが全体的に人間が薄まってしまっていて気が付くと主要な人物にイマイチ寄り添えない。
とにかく人生色々あるけど恋愛が成就すれば傷も癒えるっしょ!という話にも感じて喪失やトラウマなどのテーマに対しては不誠実かなと思いました。
そしてこの後本当のキラキラ映画『モエカレはオレンジ色』を鑑賞した所想像を軽く超えてくる世界観に腰をぬかしそうになったのでした。
やはりRPGなどでもボスと戦う前にはある程度レベルを上げておく必要があってまだまだ私が戦える相手ではなかったようです。