ユカリーヌ

戦争と一人の女のユカリーヌのネタバレレビュー・内容・結末

戦争と一人の女(2012年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

【過去に観た映画】2013.12/1

坂口安吾の「戦争と一人の女」が原作であるが、原作にはない、実在の連続強姦殺人事件の犯人を右腕を失った帰還兵(村上淳)として登場させている。

安吾を模したという作家(永瀬正敏)と女郎上がりの呑み屋の女将で、作家と暮らす女(江口のりこ)の二人の話と並行して、帰還兵の鬼畜ぶりが見せられ、
最後につながっていく。

日本文部科学省傘下文化庁文化部長出身で映画評論家で京都造形芸術大教授でもある
寺脇研がプロデューサーで
日本映画大教授で「映画技術」編集者の荒井 晴彦が脚本。


ココから先は、ネタバレ、性的描写を含むので、真白い心で観たい方、性的描写を不快と感じる方は読まないでね。

戦争で全てがめちゃくちゃになるのだと退廃的になっている男と戦争をむしろ楽しんでるかのような女。

二人は、ただ身体を貪りあう。
しかし、女はイけない身体。
絶頂を知らない女を男は 不憫に思うが、「僕のオマチャだと」弄ぶ。

でも、最初のまぐわいの時、着物姿の女を脱がせて、
いざ、挿入という所で、
男はモモヒキをはいたままでツッコム。
せめて、モモヒキからナニを取り出すカットとか、
表情のカットとかがあればいいが、いきなり男は着衣のままでつっこんでいる。
モモヒキを突き破って、挿入してる感じ。

で、あっけなくハテてしまう。
早っ!

そんな大雑把な所があるかと思うと、反面、レイプシーンでは、殴って気を失わせ、
失禁、脱糞した女のそこを丁寧にふきとったりするシーンがあったりもする。

男と女の部分よりも執拗に帰還兵を描いていたりする。
そして、最後に捕まった彼に、「戦争」を語らせる。

最後のまとめのように台詞で全てを語らせることで興ざめするのか、解りやすいと思えることなのかは映画としての好みによるものだろうが、
私としては、そこまで語らせなくてもとは感じた。

女郎屋で働いていた女は、
一日に何人も客をとっていたから、イクと身体がもたないので、イけない身体になってしまったという。

そのくせ、呑み屋の客とはほとんど関係し、作家と住むようになっても「浮気はするわ」と宣言し、男を求める。
イかせてくれる男を求めていたのだろうか。

一方、帰還兵は戦地から戻り、妻を抱くが勃たなくなってしまう。
そんな彼が、強姦を目撃したことで強姦することでしか
快楽をえなくなり、次々と強姦殺人を犯していく。

そんないびつな男女の性の比較というか、対比がされていた。

抱かれても、能面のように空を見つめるしかない女の顔が、屈折した中の激しい快楽の波の中で、変わって行く。

女にとっての「イク」という現象は女を大きく変える。

帰還兵は女に暴力をふるう時、表情ひとつ変えない。
その底知れぬ闇と怖さに、迫力があるが、被害者の女性たちの演技もすさまじく、
本当に死んでるんじゃないのと思わせるほどのリアルさが漂う。

誰の好みのなのか、やたらヘアがお披露目される。
いや、そそるというより、
こう無防備にさらけだされると、ちょっと笑う。

しかし、日曜日の朝イチで観る映画ではないね。
客層がなんとなくピンク映画館っぽかったし。

作家のダメ男っぷりが、私的にはかなりツボ。
強がってるけど、弱くて、甘えん坊なろくでなしには弱い。

パンフレットの
表紙は近藤ようこ。
原作小説、続編、シナリオも掲載されていてお得。
対談、寄稿文も多く、読み応えあり。


近藤ようこの「戦争と一人の女」漫画版は、映画化より前に企画があり、著者自ら企画を提案し、7年越しで画き下ろしたという。
映画より原作に忠実で、観念的ではあるが、女の強さが際立ち、男が曖昧かな。
ユカリーヌ

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