シャチ状球体

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

4.2
キューブリック映画に登場する女性はいつも男性の引き立て役のような扱いをされていて苦手な監督なんだけど、本作は何人集まってもまともな意見が出てこない軍人達視点の物語ということもあって、そういう意味では比較的安心して観ることができた。

それはともかく、核のスイッチを握っているのが正常な判断能力がある人間ではなかったら、そして人間を敵と味方に分ける考え方や自衛や平和のためと称する軍備増強が戦争の第一ステップなのだという至極真っ当なことをあえて露悪的な演出で描いているのが秀逸。

また、多少チープな合成映像も映画全体のブラックユーモア溢れる雰囲気と妙に合っていて、逆にリアリティを生んでいる。
特に後半、放射能の半減期について話すシーンは一気に世界観を現実に引き戻してくれるが、"地下組の女性"という実にキューブリックらしい男性的で露悪的な台詞が出てくるのもラストシーンの無常さを強調させていて、今までの彼の映画の中では一番好きかも。
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