ひこくろ

テール しっぽのある美女のひこくろのレビュー・感想・評価

テール しっぽのある美女(2012年製作の映画)
4.3
一見するとシチュエーションホラーのように見えるんだけど、この映画の怖さはそこにはない。
まるで獣のように振る舞う謎の全裸の少女と、どう対応していいのかわからないでいるレオとエルヴィス。
会話も成り立たないないなか、三人はさまざまな工夫を凝らして徐々に関係性を築いていく。
その過程で、無垢で笑顔の似合う元気な少女だったターレが、少しずつ人間性を奪われていったことがわかってくる。
ここがまず怖い。

さらに、人間の持つ闇が浮かび上がってくるのが、これまた怖い。
科学者の傲慢さ、利己的な行動、それらは業と呼べるようなものだろう。
ターレをはじめとする「彼ら」は、人里離れた森でひっそりと暮らし、人間に対して危害を加えることもない。
そこへ人間がずかずかと踏み込んでいき、彼らを一方的に蹂躙していく。
それはまるで、未開の土地に進出していく文明人のエゴそのもののように見える。

ホラーの皮をかぶっているけれど、これは現代社会に対する痛烈な風刺だと僕は感じた。
そういった意味で、とても人間が怖い映画だと思う。
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