MasaichiYaguchi

草原の椅子のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

草原の椅子(2013年製作の映画)
3.5
孔子の「論語」に「五十にして天命を知る」という言葉があるが、私はとうにその年齢を過ぎても「天命を知る」どころか、惑ってばかりだ。
本作の主人公・遠間憲太郎は、50歳を過ぎてから人生の大きな転機を迎える。
不況の煽りと成果主義に晒されたカメラメーカーの管理職である遠間は、妻に去られた後、娘と2人暮らしをしている。
そんな彼に、「袖振り合うも他生の縁」ではないが、降って湧いたような出会いが3つも重なる。
向こうから舞い込んで来た出会いもあれば、遠間から能動的に動いた出会いもある。
これらの出会いに、最初は戸惑ったり、迷惑がったり、ときめいたりしながらも、最後は全て受け入れる主人公。
出会いで繋がった4人は、夫々の過去の出来事や現在直面していることに傷ついたり、悩んだりしている。
この4人の中心にいて、彼らの繋がりを深めているのが、親に見捨てられた4歳の圭輔。
この幼い子供の将来や、自分自身についても煮詰まってしまった彼らは、ある事を決意する。
それは、一冊の写真集が導くパキスタン・フンザへの旅。
この桃源郷のようなフンザに住む純朴な人々や、美しい大自然と触れ合うなか、彼らはそこから何を見出し、これからどう生きていくのかは、本編をご覧下さい。
主人公・遠間を演じた佐藤浩市さん、遠間の親友となるカメラ屋の社長・富樫役の西村雅彦さん、遠間の思い人である陶器店を営む貴志子役の吉瀬美智子さん、つぶらな瞳の圭輔を健気に演じた貞光奏風くん、この4人が奏でる演技のハーモニーは、観ている我々の心に温もりを与え、優しい気持ちにさせてくれる。
人生に迷ったり、大きな転機を迎えたら、自分の天命を知る旅に出るのも良いかもしれない。