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マルタのTOTのレビュー・感想・評価

マルタ(1974年製作の映画)
4.5
‪父の死により家父長制から逃れたかに見えた女がDV男と結婚し、新しい支配/被支配の関係に絡め取られる。
図書館に勤め実家住まいで未婚の31歳。
母にはオールドミスとそしられるが、DV男が瘦せぎすの処女と罵った後で「僕の言うことを聞けば愛してあげる」と言われ、彼の虜になってしまう。
母と娘、夫と妻、繰り返される鏡越しの構図は、二者の緊張と対称的かつ共依存な関係を示して、恐ろしく悲しい。
父が死んだ時に愉悦の表情を浮かべ、母が死にかけた時にはあっさりと受け入れるかに見えて、いざ自分の窮地には母に助けを求める。
結婚したDV男に抵抗しようとするも失敗して、ずるずると言いなりになり、気づけば壊れた人形のよう。
規範に縛られて自分を無くし、抑圧を愛と信じようとして、家という牢獄から逃れられない女。
笑ってる人もいたけど、自分で自分の人生を生きる術を身につけてこなかった哀れな女の末路を見るようで全然笑えなかった。
いや、社会の窓と日焼けは流石に笑ったけど。
泣いといて急に、私の財布が!って言うのもマジかよって感じだったけど。
山岸凉子の救いない短編『天人唐草』とか『朱雀門』思い出した。
ってか、山岸凉子ってファスビンダー観てないのかな。観てそう。
ヘルムートの行いはいちいちヤバいんだけど、マルタ見初めた時のぐるっと回るカメラワークもうわぁ…って感じの異様さ。
こわいわぁ。
まじこわいわファスビンダー。
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