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アンチクライストのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

アンチクライスト(2009年製作の映画)
3.5
ラース・フォン・トリアー監督、脚本による衝撃作。
ウィレム・デフォーとシャルロット・ゲンズブールが夫婦を演じ、シャルロット・ゲンズブールがカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞。
カンヌに出品した際、過激な描写シーンをカットした「カトリック版」とノーカットの「プロテスタント版」が売られたとのこと。
今回はR15+版(ボカシだらけ)を鑑賞。
原題:ANTICHIRS♀  (2009)

物語はプロローグと4章の本編とエピローグで構成されている。
・プロローグ
・第1章 悲嘆 -Grief 
・第2章 苦痛(カオスが支配する)-Pain(Khaos Reigns)
・第3章 絶望(殺戮)
-Despair(Gynocide)
・第4章 3人の乞食
-The Three Beggats
・エピローグ

プロローグは、ヘンデルのオペラ「リナルド」第2幕のアリア「私を泣かせてください」に乗せたハイスピードカメラによる美しいモノクロ映像。
雪の降る夜、2人(夫婦)がセックスし快楽に陶酔している最中に、幼い息子ニックが、窓際のテーブルに置かれている「3人の乞食」の置物を押しのけテーブルによじ登り、窓から転落死する。

第1章~第4章
妻(シャルロット・ゲンズブール)は心を病んで入院するが、セラピストである夫(ウィレム・デフォー)は、自分で治療しようと、森(エデン=楽園)が怖いという妻の言葉を手がかりに、かつて行ったことのある森の中の山小屋に妻を連れていく。
山小屋で夫は妻が過去に書こうと残したGynocide(ジェノサイド=魔女狩り)の論文資料を発見する。更に、息子の検死報告書から妻が息子を虐待していたことを知る。
夫は妻の恐怖の原因を探ることで治療しようとしたのだが、妻の精神状態はさらに悪化し、遂に狂気の行動に出る…。
そして、夫は森で、pain(痛み)の狐、grief(嘆き)の鹿に続き、despair(絶望)のカラスを見ることなるのだが、この「3人の乞食」とは"死"を意味していた…。

エピローグ
・顔のない女たち

「僕は人間のネイチャー(本質)だ。
ああ、そのネイチャーね。
女に悪魔的なことを働く男のネイチャー(本質)のような?
まさにそれが僕だ。
男のネイチャー(本質)が悪魔ならば、とりもなおさず同じことが…
女にも?女のネイチャー(本質)。
すべての女たちのネイチャー(本質)。女の体を支配するのは、女ではなく女のネイチャー(本質)」

「3人の乞食が現れた時、誰かが死ぬ」

「私を捨てる気か!」

あまりにも過激なシーン(性描写と暴力描写)が多いので、鑑賞時には免疫力のない人は特にご注意ください(お子さまは見ちゃダメ)。
・血膿
・足枷(重石)、ナットとレンチ
・ハサミ…など

シャルロット・ゲンズブール扮する女は、魔女のように描かれている。
しかし、女の本質も男の本質も悪魔的である。
だから、男は女を救わない(救えない)。
タイトルにある♀(女)だけがアンチクライストではなく、♂(男)もまたアンチクライストなのだ。
なお、映画はアンドレイ・タルコフスキーに捧げられている。
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