shen1oong

かぐや姫の物語のshen1oongのレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
3.0
ネタバレ:かぐや姫は実は月から来て、最後帰ります

シーン1つひとつに「すげえ!」という感想と同じくらい「すごい!けど?」という感想も抱く作品ではある。本当は4つ星くらいの作品なんだけど、映画という興行としてどうしても高得点を出せないというか。
端的に表現のためにかけるコスト(時間、エネルギー、人材、金)が実情に見合ってる?みたいな気持ちになってしまって。自分はコストパフォーマンスを最優先するロジャーコーマンや、低コストで映画を作るアイデアを生み出したロメロ、そして映像表現に途方もないコストをかけるけどそれに見合った興行成績を挙げることを両立させるジェームスキャメロンなんかを尊敬している身としては、こんなアートフィルムでジブリのリソースさかんでもみたいな気持ちにもなってしまう

そもそも高畑勲作品に通底する左翼っぽいというか、唯物弁証法っていうんですか?あのリアリズムのあり方っていうのが、すごい自分はちょっと笑っちゃうところがあって。「おもいでぽろぽろ」での「田舎に暮らすっていうのは、その地で骨を埋めるってことなんじゃあ」みたいな生活のきっつい感じとか、成田闘争をアニメ化したぽんぽことかにも通じていて、そしてかぐや姫の一人のアニメーターのタッチを他の人が模倣する、しかも題材が日本最古の物語っていう、「うわーなんか、小国の独裁者がよくやる、自己神話起源と超人崇拝思想みたいだなあ」とか思ってしまったのだけど、自分は戦後の左翼理論のもっとも体現された芸術作品として高畑作品を見てしまう(もちろんこれは批判ではない、ナチ映画がファシズムの美しさを映してしまったようなもので。むしろ政治参加しなくて本当に良かったとも思える)こんな高コストの奇妙な作品が、日本最大メジャーアニメ会社で作られたというのが、日本の高度成長とその裏での左翼的な戦後文化の矛盾を体現してるみたいで面白いですよね。ちなみに高畑勲は文筆家としては素直に尊敬してます。ジャックプレヴェールの翻訳なんてこの人にしかできないよ
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