くりふ

世界にひとつのプレイブックのくりふのレビュー・感想・評価

3.5
【おこりんぼとやりまんの走!踊!愛!治!】

カメラワーク含め、閉塞感ある慌ただしい映画でした(笑)。

これは登場人物の視界と言動に沿ったものですね。心を程よく統御できぬ人の、ギスギスした日常を体感できるリアルがありました。

で、この類の病(状)を、大げさな額縁で飾らず、健常(と一般に言われるもの)と地続きで提示する柔らかさがよかったです。心の根っこはキチンと働いているのに、OSにバグがある感じ?

停車位置を必ず間違える運転手みたいな。できずに余計焦ってしまう。主役カップルの、ジョギングでのすれ違いが象徴的で面白かった。

で、どうやって停車位置を揃えようかって話になるんですね。だからペアでダンス、というのは納得のプレイブックだと思いました。でもこれ、ミサトさんがシンジとアスカにやらせたのと同じだな(笑)。

コンテストでは二人の舞いをあまり見せず、互いの切り返しばかり、という強引な撮り方に驚きましたが、これもう、○○○○じゃんか(笑)。周囲はアウトオブ眼中で火ぃつけちゃって、露出プレイかよと。多分、下手でもそこだけは、審査員に伝わったんじゃないでしょうか。

実は助平さんのデ・ニーロ父ちゃん、ちゃんと見抜いてましたね(笑)。ここの甘い炎上で、その後の流れがとても自然になってよかったです。

タイトルの真意は、英語に不自由な私にはよくわかりませんが、曇り空の下にいる限り、晴れというプレイブックは手に入らない、というアイロニーが含まれるようにも感じます。

でもその向こうに、幾ら戦略立てても結局、人と人はぶつかって停車位置揃えるしかない、という含みもあるんじゃないかと。物語からはそんなふうに感じます。

プレイブック(戦略図)ということで、単純に微笑ましかったのは、主役カップルが愛を勝ち取るのに、二人とも現代病に罹ってるくせに、お互いに、古典的ツールを使っちゃうっていうところでしたね。

しかしまー、デニ父ちゃん!彼の方がよっぽど危ないよなぁ。何をしでかすかと思えば、家族愛という名のギャンブルかよ!アメリカらしき(?)Overnight Successを掴む最後のプレイブック(笑)。

プレイブックに掛けてると思うけど、父がブックメーカーてのが凄い。

人物の魅力では、私は世界にひとつのジェニファー・ローレンス推し!

まだ22歳だって!?こんな過去背負う人妻をこんなふうに演じるって、かなり巧いんじゃないか?ハリウッドのプレイブックじゃなくて、映画の神様のプレイブックを使って、もっと大きく育ってほしいです(胸部含め)。

レオタード姿での某部揺らぎは目に焼き付きました。予想通り、監督指示で役柄に合わせて小太りしたようですね。

あと、本作には監督の実体験が投影されているとも、後で知りました。ハンデをやさしさで包みたい、という願望に改めて納得したのですが、これがウケているなら、アメリカもまだまだ、疲れてるんだろうなあ、Bigger, Stronger, Fasterの国なのに…と肩を叩いてあげたくなった。

全体では、物語としてキチンと結末を迎えたというより、句読点を打ちとりあえず終わった感じがします。締め方はあっけない。

アイロニーの効かせ方が弱かったんだろうな、という印象なんですが、そのぶん役者力が強いので、それなりに納得してみ終われたのでした。

<2013.3.4記>
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