おたしん

愛、アムールのおたしんのレビュー・感想・評価

愛、アムール(2012年製作の映画)
3.8
老老介護…今後も続く問題か。
思っていたよりシリアスな内容だったけど生活音と人の声のみが流れるリアルな暮らしを感じることができた。
さすがの演技もあってか半分ドキュメンタリーのようにも感じる。
アンネを演じているのか本人なのか分からないほどの溶け込み具合。
完全に世界観に入り込ませてもらった。

介護する側はもちろん大変だけど、
介護される側の精神的な部分も思っているより不安定になりがちだろう。
両者のフラストレーションがバチバチと音を立てていくのがつらいけどしょうがなくて言葉にできない。

誰かが側にいないと生きていけない状態がいつかは来るのか。
介護士は不足しお金もかかるとなると家族の助けしかないのか。
人はいつか死ぬし衰退していく。
弱っていく様を見るのって悲しい。
自分で何もできなくなったときに頭に浮かぶのは尊厳死か。
周りに助けてもらっている分すぐに決められることではないけど。

子供が成長し大人になり老人へ。
老人も衰退し子供のようになる。
小さい頃は子供は親の責任。
大人になると親は子の責任。
ITが進化し続けてもまだ人の手が必要。
この問題の解決はまだまだ先か。

最初フリーズしたかのようなとき時が止まった。
そこからもう怖かった。

年齢を重ねていたらいつかはそんな時がくるかもしれないが覚悟はできているものなのか。
それでも愛があるから一緒に楽しく暮らしたいと自分を犠牲にしてでも尽くす。
生活の手助けや優しい言葉をかける。
それって一生続けられるのか。
毎日って考えると狂いそうになる人もいるはず。
でもあれが私たちの未来かもしれない。
歳を取るの大変だな…。

最初はジョルジュも一生懸命だったけど、
だんだん笑顔も消え作業的になっているように見えた。
早くも限界が近づいているかのような。
そして衝撃のシーン。
あれはどの感情によるものか。
愛…なのだろうか…?
まだ私には分からなかった。

そして1人の寂しさと孤独感は生きる希望を奪うのか。
何かを諦めたのか気力すらなくなったのか。
はたまた願っていたのか。

何も変わらずただシーンとした家が余韻を残して幕を閉じた。

あんなに愛していても限界がくるのか。
難しい…人間も加齢も衰退も。
数年ごとに見ていきたい作品。
その度に自分が彼らに近づくと思うと毎度感想が変わるのかな…。
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