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ベラミ 愛を弄ぶ男のodyssのレビュー・感想・評価

ベラミ 愛を弄ぶ男(2012年製作の映画)
3.0
【キャスティングに難あり】

モーパッサンの有名な長編小説の映画化。
私は原作はだいぶ前に読んだので記憶が不鮮明。でもまあ、貧乏な青年が美貌を武器に女たちを利用してのし上がっていくお話だから、原作を知っているかどうかは影響なし。

タイトルの「ベラミ bel ami」は、「美貌の友(愛人)」という意味。amiというフランス語は、友人の意味にも愛人の意味にもなるわけで、そういう愛称で呼ばれるような美貌の青年が主人公だということなんだね。

ただし、この映画、英国で作られているので、使用言語は英語。これ、やはりフランス語でないと感じが出ないと思うんだけどなあ。あちこちで撮影して、19世紀パリの雰囲気がそれなりに出てはいるけどね。

それから問題なのはキャスティング。
まず、主役の青年には『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソンを迎えたわけだけど、どうかなあ。パティンソンは表情に少し影があって、吸血鬼ならば適役だろうけれど、女を利用してのし上がっていく男とはやや印象が異なるような気がするんだが。

それから女優陣も難あり。特に、ユマ・サーマンは私は嫌いなので、別の女優にして欲しい。あの鼻を見るとぞっとしてキスすら御免こうむりたくなる。クリスティーナ・リッチは3人の中ではいちばん魅力的だと思うけど、やや子供っぽいというか、不倫の人妻には足りないような。クリスティン・スコット・トーマスは、ああいう役だから色気抜きでも仕方がないけど、他に誰かいなかったのかな。

あと、筋書き面で言うと、伯爵との関係は最後のあたりではもう少しはっきりさせて欲しかったな。分かる人には分かるのかも知れないけど、現代の観客には分かりにくいのでは。

ああ、それから美貌だけを武器に女を利用して・・・という筋書きだけだといかにも軽薄な物語に思えるかもしれないけど、作中で言われているようにこの時代のパリでは女が権力を持っており、だから高い階級の出身でもお金持ちでもない青年がのし上がっていくのに女を利用するのは、いわば当たり前なんだね。それは、現代なら男社会の中で女が肉体を武器にのしあがっていくのと同じこと。

人間って、煎じ詰めて言ってしまえば、そういうものなんだね。階級にもカネにも、そして美貌にも縁のない、私を含む映画オタクは、ま、映画を見て憂さを晴らすくらいしか道はないのだ、困ったことに(笑)。
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