親になると、金よりも地位よりも、何よりも子供が一番大切になる人が多いと思う。
本作は、イギリスとアイルランドが対立していた時代、IRAに身を置く家族や周りの人々の中で育ち、母となったヒロイン、コレットの葛藤のドラマを描く。
ロンドンの地下鉄爆破未遂犯として逮捕されたコレットは、イギリス諜報機関であるMI5から、愛する息子と別れ、25年の刑期につくか、「密告者」になるかという究極の選択を迫られる。
愛する息子との生活を選んだ彼女は、IRAへの背信行為と、MI5からの監視という綱渡り的な生活を送る羽目になる。
そして、IRAが起こしたある襲撃事件を切っ掛けに、彼女はギリギリの瀬戸際まで追い込まれてしまう。
この作品はスパイ物だが、同じイギリスの「007」とは違い、派手なアクションも銃撃戦も無い。
真綿で首を絞めるように、ジワジワとサスペンスが加速していく。
ストーリーが展開していくなかで、もう一人の「密告者」である「シャドー・ダンサー」の存在が浮上してくる。
この「シャドー・ダンサー」の正体が判明した時、家族の悲しい物語が見えてくる。
外見はスパイ物だが、この作品は思想信条や国の姿勢によって翻弄される家族のドラマだと思う。
自らコレットを「密告者」に仕立て上げながら、彼女に惹かれるMI5担当官マック。
コレットの息子マークや、母や兄弟に対する愛情。
様々な「愛」が錯綜する展開の先に待っている衝撃のラスト。
コレットの「最終選択」が、心に余韻を残します。