【辺境にこそ地球規模の問題は現れる】
イタリアの、地中海に浮かぶ小さな島。むかしは漁業が主たる産業だったけれど、それも最近は不振で、観光業に転じる者、他の土地で新しい生き方を模索する者などさまざま。そこに、アフリカからの不法移民が。
舞台は小さい島だけれど、大きな問題を抱えた映画になっています。いや、イタリアと言ってもローマやミラノ、ナポリといった大都会ではないからこそ、現在の地球が抱えている大問題がそのまま生の形で表れていると言えるのです。辺境だからこそ、本当にわれわれが考えなければならない問題に人々は直面する。大都会でのように、マスコミを通じて間接的に接するのとは異なる形で。
漁業不振はむろん地球の食糧資源が枯渇しつつあるしるしですし、アフリカからの不法移民問題は(すでにこのテーマでの映画は何本も作られていますけれど)ヨーロッパには誰が住むべきなのか、19世紀以来の民族国家という概念がはたしてこの先通用するのか、という難題につながっている。イタリアの小島に、そういう地球規模の問題がそのまま出現しているのです。
日本だって、大震災による原発事故であるとか、最近ならJR北海道の特急列車や線路保全をめぐる問題がある。日本でも辺境にこそ本当の難題が潜んでいるのだし、また原発事故なら電力供給の安定が保てるかという、少し変形された形で都会住民にまでその問題は及んでくるのです。JR北海道に関する一連の事件は、はたして今後日本が今までの技術力を維持できるのか、という不安を抱かせるものだし。
そういう意味でこの映画は、辺境に生きる漁民たち、そしてアフリカからの不法移民たちの姿を通じて、地球の住民すべてが現在どういう困難に際会しているのかを率直に示していると言えるでしょう。
決して社会派を大上段に振りかざした映画ではありませんが、心ある人にはぜひ見てもらいたい作品です。