《侍の映画》、Vol.17。『清須会議』。
「年下の嫁は年上のように、年上の嫁は年下のように扱うのが円満の秘訣だ」
このセリフが存外に1番名言だったかもしれない。
清須会議。実際にあったとされる評定。
織田信長が本能寺の変で明智軍に討たれ、瞬時に駆け付けた豊臣軍が明智軍を滅ぼす。
その後、織田家の家督争いを誰にするかとなって、信長の次男と信雄と三男の信孝が主張し合う。
そこで、待て待てと間に入った織田信長に忠実な4家老。柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、池田恒興。
この4人が織田家の古巣である清洲にて信長の孫である幼き三法師を推挙したことでことを収めた、とされる評定。
特に羽柴秀吉、後の豊臣秀吉がこの評定において様々な駆け引きの数々が功を奏して、後の活躍の土台を作った、とされる。
三谷幸喜監督脚本と、歴史的に有名な人物を豪華な役者で彩る。
相変わらずコントさながらで、歴史上の人物を極端なキャラの強さで作り上げる。
誰も彼もがキャラ濃すぎ。クセ強すぎ。
そして、誰しもが腹黒い。
この戦乱の世の中における評定という武力ではなく、知力と策略の騙し合い、裏の取り合い、情報戦、根回し。
自分の主張を通すために相手の懐に入ってみたり、あえて嫌われてみたり。
自分がとった行動が実は相手の手中で踊らされてたり。
みんながあっけらかんとし、本当にあっけらかんとしてる人物もいれば、そうでないこともあって。
清洲城の城内だけでそれぞれ動き回ってあれこれ画策し、堀を作って周りを固めて、相手の牙城を崩す。
城の中で、評定という名の戦が始まる。
いつの時も、どんな役柄で柴田勝家は剛腕で無骨で真っ直ぐなキャラだな。
柴田勝家と羽柴秀吉のバチバチの間に挟まる丹羽長秀や池田恒興も何となくイメージ通り。
したたかな羽柴秀吉と黒田官兵衛。
色んな人を巻き込んでは、織田家の家督争いのどさくさ紛れで自らの地位を確立していく。
この気持ち良さ。
天下を取る、太平の世を目指せるのは、力の強さだけではできない。
ドス黒い腹の黒さを隠しながら、次から次へと集まる重臣や織田家の親族を巻き込みながら、それぞれの利害を利用しながら。
天下分け目の大戦ではない、ただの合宿会議的な身内の家族会議で確実に世が動いたその瞬間を切り取った歴史的群像活劇。
評価低めだけど、日本史好きな個人的には割と楽しめた。
この織田家の子孫達の極端な“織田っぽさ”がかなりギリギリアウトだと思う。
それもそれで良い、とする。