NM

清須会議のNMのレビュー・感想・評価

清須会議(2013年製作の映画)
3.9
豪華役者陣。これ以上は望めないのでは。
いつも天気が良く色彩は鮮やかで漫画チックな雰囲気がただよう。

巻物がざっと広げられるオープニングもお洒落。時代劇といえば地味で難しいイメージだが、どうもそうでないらしいぞと興味をそそられた。
BGMも和風から西洋風、西部劇風などコミカル。

本能寺の変からスタート。信長の後継は誰かが作品のテーマ。

大泉洋が出てきた時点で、ああこれはユーモアもあって観やすい作品なんだろうと安心する。
期待通り時代劇の型にはまらない面白さ。
秀吉役をリアクション大きめに演じ、主役っぽさを感じさせる。
謀反人明智を討伐し、家来も多く町人にまで大人気。このまま権力を手にするかと思うとそうはいかない。

対して勝家(役所広司)は、忠実ではあるが不器用で無骨、なにか大きなドジを踏みそうな危うさがぷんぷん。常に必要以上に声が大きかったり、ミスや失礼に気付かず自己満足しているシーンが多く、人の心を大きく見誤りそう。
だがブレインである丹波(小日向文世)の助言や、お市の方の強力な後押しがある。お市の方は秀吉が大嫌いなので当てつけのために仕方なく勝家の後押しをしているだけで、内心見下している。色仕掛けで勝家をけしかけると、勝家はお市の方にすっかり恋をしてしまう。

ちなみにこの清須城は宿老たちの部屋はやけに近く、よく会話が筒抜けになる。というかみんな重大な話を割と大声でしている。

勝家は信孝を跡継ぎに推す。
坂東巳之助に打ってつけの、勇敢で知的で高貴な雰囲気。きりっとした目と眉、高い鼻筋。彼が歩くと皆ひれ伏し、BGMには西洋の優雅な室内楽がかかっている。

次いで秀吉が推したのは大うつけと評判の信雄。秀吉自身も信雄を信用していない。ただ信孝と勝家が権力を持つと秀吉の立場がなくなるのでそれだけは避けたい。
秀吉は更に、信長の弟である三十郎にも取り入り戦闘力強化。だが世捨て人のような男でいまいち便りにならない。

跡継ぎを決める会議に際し、出席者を決めることに。どちらの味方を多数派にできるかが勝負の分かれ目。

出席する宿老に二人ともが推薦したのが池田。彼は特にポリシーがなく、とにかく自分に得のある方につく。
池田は勝家に恩はあるが、勝家には池田が飛びつくような褒美を用意するセンスなどない。対して秀吉は広大な領地の褒美を約束する。

それに対し両方の申し出を受けてしまった池田は困った立場に。
ちょうどそのとき旗取り戦(ビーチフラッグ大会)が開かれ、はちゃめちゃなインチキ大会となる。あまりストーリーとは特に関係ない面白コーナー。
ただ、池田はどっちつかずで頼りにならないし、一見適任に見えた信孝も何だか弱々しい一面があることが示される。

勝家はこの大事なときにすっかり恋に本気になり、ブレインである丹波は呆れ果てる。それを見透かした秀吉は、会議の前夜、こっそり丹波のもとを訪ねる。
秀吉はうつけ信雄を見限り、信忠の嫡男で信長の嫡孫・三法師を推そうと丹波を説得する。
もしこちらが負ければ自分の立場を追われると悟る丹波。

会議当日。
秀吉、勝家、丹波、池田の四人が出席。自分も出席するためずっとどこかを走り回っていた滝川が不憫であった。

秀吉が言う。天正四年に信長は家督を既に信忠に譲っている。だから今日決めるのは信長の跡目ではなく信忠の跡目だと。

そしてその三法師を抱いて現れるのは。
これで終わりではなくもう少し続きがある。

現在でも社会で成り上がろうとするならこのぐらいの計算、先読み、根回しをすべきなのだろう。現代なら飲み会を断っても普通だが、ここではそんなことはありえない。池田など朝食を2回食べている(自分のまいた種だが)。

政治を動かすのは男性とは限らない。お市の方の迫力に思わず女性は怖いと思いがちだが、ここで勝ち残る人たちは男女関係なくみんな怖い。目的のための綿密な戦略、時に賭け。執念がないと生き残れない。

作品の大筋は史実だが、詳細は未だ不明な点も含まれている。細かいことは抜きにして楽しむべし。

大物が大勢出るので、この人が鍵なのでは、何かするのでは、とちょくちょく思いがちだったが、特に何もせず終わる役も多い。
NM

NM