Koshi

図書館戦争のKoshiのレビュー・感想・評価

図書館戦争(2013年製作の映画)
3.7
「図書館法第4章第34条に基づき、防衛権を発動する」

本作の舞台は、公序良俗を乱す表現を国家が取り締まる「メディア良化法」が成立して30年が経った2019年(正化31年)の日本。
ここでは、メディア良化委員会(国家)が、武力行使も辞さない強引過ぎる検閲を実施し、本の自由は著しく損なわれていた。そして、これに対抗する形で、図書館の自衛組織である「図書隊」が本の自由を守るために設立されている。
本作は、この図書隊に入隊した一人の女の子、笠原郁(榮倉奈々)と彼女の教官である堂上篤(岡田准一)を中心に展開される。
また本作の見所は、メディア良化委員会(国家)vs図書隊の戦争の話だけではなく、笠原と堂上との2人の恋の物語でもある所である。
果たして、本の自由は図書隊によって守られるのか。そして、2人の恋の行方は一体どうなるのか。あとは是非本編を観ていただきたい。



岡田准一が榮倉奈々に身長イジりされていたのが面白かった。こんなにも岡田准一がチビだと言われる映画があったとは。

戦闘シーンは、さすが防衛省・陸上自衛隊の全面協力だけあって想像以上に迫力があり、驚いてしまった。これは戦争映画じゃないかと思ってしまったぐらい緊張感のある銃撃戦が繰り広げられていたのだ。

本作のような世の中になってしまったら、本当に恐ろしい。本を守るために国のメディア良化委員会と図書隊が戦争を起こすなんて極めて異常である。メディア良化法が制定されないよう、政府にはメディアを取り締まる際はその限度をしっかりと弁えてもらいたい。

本作に登場する図書隊は、現在の自衛隊のようなものだと考えてもらうとわかりやすい。「国」を守るため、「本」を守るため、とそれぞれ守るものは異なるが、徹底した専守防衛のルールの存在は同じである。
図書館戦争において、相手の攻撃を確認してからではないと、攻撃することが出来ない、また、相手に致命傷を与えることが原則として出来ないという点では圧倒的に図書隊は不利である。それでもなお、本を守るために戦っている図書隊の隊員たちは、本好きの人たちにとって尊敬の眼差しが絶えない存在であろう。国の本への検閲は、何も遠い昔の話ではない。本作は、改めて私たちに行き過ぎたメディア表現の取り締まりの意義について考えさせてくれる良作のSFミリタリー作品であったと思う。



私の1番好きな場面は、児玉清が、日野図書館館長の稲嶺和市役を写真だけの出演ではあったが、演じていた場面である。この場面には非常に驚いたし、何よりも感動してしまった。これ以上ない最高のキャスティングであったと思う。
2011年5月16日に彼は亡くなっているにも関わらず、亡くなった日野図書館の館長役として彼をキャスティングしているのが素晴らしい。児玉清は、有川浩さんの小説が大のお気に入りであり、そのことを彼の著書で読んで知っていた私にとっては、本当に嬉しい配役であった。寝ても覚めても本の虫であったぐらい本が大好きで、読書家であった俳優は彼以外にはいないはずだ。そんな彼を、名誉ある死を遂げた日野図書館の館長役として本作で抜擢するとは、本作の製作陣はよく分かっているなあ。本作は、こういった細かい所にもよく配慮されて作られた非常に丁寧な作品であったと思う。
どうも有川浩さんは、原作では図書隊の創設者である稲嶺和市を児玉清のイメージで執筆していたらしいのだ。こういったイメージをそのまま採用したオリジナル脚本の素晴らしさに、私の中で本作の評価はグーンと上がった。





続編の『図書館戦争 THE LAST MISSION』を観た後、原作を順番に読んでいこうかなと思っている。その際、是非とも実写化作品の内容とも比較しながら読み進めていきたい。
この物語は、どのような結末を迎えるのか、そして、堂上教官と笠原との2人の関係はどうなるのか。次回が非常に楽しみである。
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