さわら

旅立ちの島唄 ~十五の春~のさわらのレビュー・感想・評価

3.0
人は通過儀礼を通じて大人になるとするならば、南大東島の歌姫たちにとってはそれが名ばかりの成人式なのではなく、「アバヨーイ」の独唱こそが通過儀礼なのだろう。大人というにはあまりにも未熟で頼りない、だけれども島を出ていく(大人になっていく)そんな儚い仲里優奈役を、三吉彩花を見事に演じ切っている。撮影当時まだ15歳というから、末恐ろしい女優の卵である。脇を固める小林薫・大竹しのぶは安定してるし、南大東島の自然も美しい。なのに、とても満たされない気持ちになった。それは114分という短い時間に少女の1年をまとめてしまったことである。お盆のときから、突拍子もなく元旦にジャンプするのは驚いた。あまりにも早く、旅立つ優奈に同情する余地を許さない。それは人の親になったことのない者の意見だろうか。後ろのおばちゃんが号泣していたが、僕はあまりにも冷静な心もちであった。なにかと惜しい作品である。