Yoko

建築学概論のYokoのレビュー・感想・評価

建築学概論(2012年製作の映画)
4.1
建築家として働く男性”スンミン”のもとに大学時代の初恋相手”ソヨン”が訪ねてきた。
家を建ててほしいという旨を伝えてきた初恋相手を前に学生時代の記憶が蘇り…。

正直話はかなりベタ。
でも、だからこそいい!と思えた佳作。

大人になっていながらも未だにおそろしく「鈍感」であるスンミンには結構イライラさせられた人も多いのでは。
しかし、こんな初恋を経験してなぜここまで「鈍感」なのか。
それは肉体面や社会的には成長しても、恋愛的センスや心理面において着実な成長をしてこなかったからだと思う。
おそらくスンミンは初恋以降から作中の現代に至る時系列において恋愛をしてこなかった、というより出来なかった人だったのかなと考えると、この「鈍感」は彼の人生の成り行き上しょうがないのだ。

そんな鈍感な彼が、当時の情熱を「無意識」に建築の間取りや設計に投影する姿。
これが非常によかった。
なぜ「無意識」なのかというと、意識的に情熱を注いでいるのならば彼女の視線の存在に気付くし、とあるシーンでスンミンが「激怒」するはずがないからだ。
ここぞというときに不器用な人。
実際問題こういう人結構いるだろうし、ここで共感できるかが今作に感動するかしないかの分かれ目の一つでもあるんじゃなかろうか。

展開が進むにつれて、恋愛だけでなく実家との関係性の中にあった様々なことに気づいて名実ともに「大人」になったスンミン。
門の前で泣く姿や、肩に「彼女」の頭を乗せる彼の表情が物語る言い難い辛さは、まさに「大人」じゃないと出せない素晴らしい表情。
これぞ成長物語!見事でした。

それと、受験に失敗した同い年の浪人生"ナプトゥク"の存在。
彼がとにかく最高!
下手に多くの場面で出さずに出るべきシーンでのみ出す。
使い方がよくわかってるなぁ。
同い年でしかも大学生の主人公に対して受験に失敗している人物が頼れる兄貴分キャラという設定も奇抜でグッド。
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