垂直落下式サミング

茶の味の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

茶の味(2003年製作の映画)
3.6
東京近郊のド田舎に広がる田園風景、木造家屋、ボロい校舎、単線電車…、都会から少し離れた辺りにはどこにでもありそうな日常の中、物語の軸になるのは登場人物たちがそれぞれ心に抱える小さな悩みの種。
しかし、悩みと言ってもいわゆる人間関係によって生じるすれ違いやしがらみといった類のものではなく、描かれるのはごく個人的な薄ぼんやりとした不安や焦燥であり、他人にはあまり関係のないもの。
六歳の女の子は、もしかしたら鉄棒の逆上がりができたるようになったら、あの大きな自分の分身みたいなのが消えてくれるんじゃないか…なんてことを考えていたりと、そういうロジカルさの入り込まない世界観なのである。
ポップカルチャーを反映したアニメと実写との兼ね合いも、一見するとバラバラで一貫性がなさそうな羅列に見えて、やっぱり意識的な織り交ぜと呼ぶことははばかられる構成。だからといって、観る側がそれに意味を見いだそうとする不毛さにも自覚的であり、そう言った脱力系なところはアウトサイダーアート的。そこに、ある種の独自性を見出だすことができる。
幻想のような作り込みと、季節をとらえた映像美は見物だけど、役者のお芝居は野放し過ぎ。我集院達也の喜劇ノリがキツいし、庵野秀明はキモいし、浅野忠信はいい芝居してるのに画面がゲテモノだらけで損してる。癖のある演者ほど演出で飼い慣らさないとだ。画面をすべてコントロール仕切らないと、シュールな芝居とはこうも難しいものなのか…。
一本の映画のなかに、大好きな要素と大嫌いな要素が混在していて、どうにも受け付けない。演出や編集のセンスがもう少しだけ違っていたら『ウィーアーリトルゾンビーズ』くらいのお気に入りになったかもしれないのになあ。
でも、土屋アンナの可愛さは不変。ヤンママイメージを決定づけた『下妻物語』とはうってかわって、都会のギャルっぽいのに文化系!あの感じなのに「オタクくーん、一局打とうよ。」は恋してしまう!