半兵衛

キラー・スナイパーの半兵衛のレビュー・感想・評価

キラー・スナイパー(2011年製作の映画)
3.5
どいつもこいつも欲深くて程度の低い一家と殺し屋による金のためにお互いがお互いを傷つけ合いだまし合う四畳半ノワール。フリードキン監督の殺伐とした演出と動物のようにモラルもなく吠えて暴れまわる登場人物がどうしようもない奴らのドラマによく合っている。そんな彼らを傍観する一家の娘も知恵遅れという設定から「悪党たちを純な心で癒していく」キャラだと思いきや結構回りを観察している油断ならない娘で、男関係の激しい義母とともにあばずれなファム・ファタールとしてドラマをかき回す。

主人公ともいえる借金で首がまわらない一家の長男が保険金目当てで実母を殺害しようとするも、その事件が思わぬ方向に向かいとんでもなくみすぼらしくてみみっちいドラマにぴったりな結末へとひた走る語り口が素晴らしい。

でも元が舞台作品なためか舞台の大半が家に限定されてしまい役者の動きや会話があまり映画らしさがなくて活劇になっていないのが気になったりする、特に後半のぶつかりあいはもっと暴力がヒートアップするのかと思いきや会話で済ましいている部分が多くて物足りない気分に。あと家の外にいるよく吠える犬は最後の暴力に参加させるべきだったと思う。

それでも『団地妻 ニュータウン暴行魔』の疑似ぺ○スに匹敵するフライドチキンを使ってのフ○ラはかなりのインパクトで、どんなポルノよりも卑猥さと陵辱を感じさせた。

この映画のキモとなる殺し屋ジョーを演じるマシュー・マコノヒーの、巨匠相手なのにトレードマークの帽子をつけて演じるこだわりに感動(途中で外すけれど)。そしてラストの清々しい笑顔。
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