RyoIkeda

ザ・デッド/「ダブリン市民」よりのRyoIkedaのレビュー・感想・評価

3.3

雪の降りしきるダブリンはクリスマスを迎えていた。
モーカン姉妹とその姪メアリーの主催する舞踏会に今年も常連客が大勢顔を揃え、その年の終わりを締め括ろうとしている。
メアリーのピアノ演奏、老嬢ジュリアの優美な独唱、客人グレイ氏による詩の朗読が舞踏会に華を添えるなか、モーカン姉妹の甥ゲイブリルは食後のスピーチが気になってしょうがない。

ジェイムス・ジョイス原作の短編を忠実に再現した本作はやや冗長に感じてしまう。
しかし、物語の終盤、会の終わりを迎えた館に美しいテノールの歌声が響き渡り、そのメロディに酔いしれるゲイブリルの妻グレタの姿に息を呑む。

映画表現だからこその、アイルランド音楽と人々の活気が織りなす場面の応酬と幻想的なワンシーンは、原作にはない味わい方を提示している。
RyoIkeda

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