傘もささずに子ども服屋のショウウィンドーに鼻先をベターってくっつけて憂鬱な表情をみせる女が、雨宿りがてら入る戦後派集団の絵画展。はじまりからすごくいい。警察官を好きになって、会いたいがために犯罪を犯す。ラブ・イズ・ベストって詩の出だし。犯罪者との結婚という大いなる葛藤の末にへんな夢みてうなされる水島。やさぐれてるけど子供抱えて生きて詩を書く三條美紀、不器用にもがいてこれぞただの女って感じでかっこよかった。轉落の詩。

1950年に主人公のこのキャラクターは相当新しかったんじゃないか。ラストまで一直線。観られて良かった。衛星劇場にて。

物凄くユニークな映画で驚いた。ズベ公(三條美紀)と警部(水島道太郎)のメロドラマなんだけど、時に表現主義的にもなる技巧を凝らしたミステリ映画的な作りで、最後はちょっと見たことのない法廷ドラマになる。愛を情緒でなく探偵のように論理で語って成就させる、こんな映画は始めてだな。気合が入っている時の加戸敏。出だしからもう画面の緊張が違う。
西洋スタイルの怪奇映画『白髪鬼』49も素晴らしかったし、新人時代の加戸敏は鬼才だ。次がアメリカ映画の『絢爛たる殺人』34と『裸の町』48を接ぎ木した『絢爛たる殺人』51で、あれも面白かった。この表現意欲を維持してくれればよかったのだけれど。
『銭形平次捕物控 まだら蛇』57見た時、こんな耽美的な映画も撮る人なのかと思ったけれど、初期がこの感じだから当然と言えば当然だったんだな。