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カレ・ブランのSariのレビュー・感想・評価

カレ・ブラン(2011年製作の映画)
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『時計じかけのオレンジ』『ソイレント・グリーン』などディストピアSFの歴史を塗り替えるフレンチSFの傑作として高く評価されたジャン=バティスト・レオネッティの驚異のデビュー作。

それほど遠くもない世界。十代のフィリップは、人肉加工工場で働く母と住む集合住宅の移民系住民である。しかし、街頭のスピーカーからは市民の妊娠と出産報告とセックスの奨励、そして木槌でボールを叩くクロッケー試合の結果報告が放送され続けている。母は絶望感で自殺し、残されたフィリップは、孤児ばかり集められた施設に送られて首吊りを図るが、そこで少女マリーに助けられる。数年後、ふたりは夫婦となるがすれ違い…。

〈社畜〉と〈家畜〉を主題に淡々と進む物語。事件らしい事件はほとんど起こらず、映画のほとんどの部分はこのディストピアに生きる人々の日常が映っているに過ぎない。しかし、当たり前のように人々がやり過ごすその日常こそが異常。近未来SFが描く恐怖とは、すでにどこかで始まっているかもしれない錯覚そのものであり、不可視なその接近速度を見事に映し出していく。

少女時代のマリーを演じているのは、まだあどけなさの残るアデル・エグザルホプロス。
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