作家田中ロミオの著作を原作とした劇場アニメーションで、厨二病を題材として現実と虚構の間でモラトリアムを続ける思春期の少年少女を描いた話なのだが……。
端的に演出の妙に欠ける映像作品で、本作がアプローチする普遍的でこそあるが大衆に根深く刺さる題材を活かしきれているとは言い難い淡々とした話運びには落胆が大きい。というのも私個人がこうした『決して世間からは賞賛されない内省的な思春期による仄暗い青春の結実』というテーマを好ましく思っているので、この半端に触れてくる筆致が大変癇に障ったというのは少なからずあるだろう。
厨二病という歪なモラトリズムを脱却した主人公と渦中のヒロインを対比的に見せることで終盤の展開を迎えたいのか、あるいはありふれた厨二病とそれ以外の人間の噛み合わない模様を見せたいのか、半端に受け入れられ排斥される描写はなんの的を射る事も出来ていないように思えた。
印象的なイジメのカットも舞台設定の滑稽さに引っ張られて、それを現実に汚される虚構の姿として見るのは難しく、ダイジェスト気味に語られる物語の様相を思えば説得力に欠く物語だったと言えるだろう。