実話であるということ。
父の殺害を依頼した家族のような状況は、本件では「たまたま」先生の存在から現実のものとなっただけで、「この人がいなくなればラクになるのに」という状況に追い込まれた人々は世の中に無数にいるだろうということ。
もし自分がそうだったとして、「己の手は汚さないが、死は望む」という意思を(最終的には表示を飲み込むにせよ)内心に有するかもしれないことを完全に否定することはできないこと。
明示する描写はないが、主人公はおそらく自身の家庭が抱える問題について、この事件と何かしら照らし合わせたと容易に想像できてしまう「自分がいること」。
など、本作の描く「凶悪」とは、ヤクザでも先生でもなく、観賞者自身に巣くいうるものだと思った。それが一番怖かった。