重厚な人間ドラマである。この映画において、「ガリレオ」というのはとりあえずの仮面にすぎない。自己弁護や詭弁のための嘘ではない、誰かを守るための優しい嘘の物語であった。単なるハッピーエンドで終わらない結末も、この映画に深い余韻を与えている。そして何といっても、この作品における成美役の杏の存在は特筆すべきものがある。彼女のこんがりやけた肌は海の街にふさわしく、健康的な美しさを感じる。また鼻水を垂らしてまで涙を流すシーンでは、素晴らしい怪演を見せてくれた。今まで他に注目してこなかった女優ではあるが、今作で大女優の片鱗を見せてくれたように思える。ただのドラマの映画化としてスクリーンに臨むと肩透かしをくらう。ぜひ見ていただきたい、今年度を代表する傑作になりうる映画だった。
