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パシフィック・リムのparanoiaandroidのレビュー・感想・評価

パシフィック・リム(2013年製作の映画)
4.3
終わってみて気付く2時間の濃さ。
前半の大部分がトレーニングや人間ドラマに費やされ、よもや尺稼ぎかと思いきやなんのその。濃密な怪獣バトルのための前振りにしか過ぎなかった。
「我々は軍隊ではない。レジスタンスだ」
司令官の言葉通り、怪獣との戦いは近年ハリウッドではありえないほど凄惨な死力戦が繰り広げられる。

怪獣のデザインはレッドキングやアンギラスのような恐竜タイプでは無く、ビオランテのようなクリーチャータイプである。パワー押しというより、不意打ちや溶解液といった悪役らしさを全面押し出した攻撃を得意として悪逆非道っぷりを見せてくれる。
対して我ら主人公イェーガー機・ジプシーデンジャーは遠景から見る曲線美溢れるスマートさと近景時の機械工学の結晶のような緻密さを併せ持つ機体だ。
搭乗スタイルは正にパイルダーオン。操縦も二人のパイロットによるシンクロ操作、とかなり日本の特撮・アニメの影響が大きいのではないだろうか。必殺技にもギレルモ監督の趣味が伺える。

バトル描写もお約束に漏れずビルの破壊や重量感溢れる技の応酬がある中で、WWEのようなプロレス合戦や水中での無重力に近い環境での戦いは、戦闘描写にもディテールを求める視聴者にも見応え充分の内容ではないだろうか。
視聴する上で重要なアングルや構図も緻密に構成されており、「あれ?さっき殴った怪獣はどこに行ったの?」のような迷子状態にはならないだろう。視覚的な情報説明がとても親切なのが印象的だった。

日本の特撮愛とアメリカのヒロイズムの融合、と言ってしまえば簡単かもしれないが、そのような多くのハリウッド作品を見てコレジャナイとお嘆きの皆様。パシフィック・リムは期待を裏切らないでしょう。
等身大の人間ドラマと巨大な危機と怪獣と言った構図はむしろスーパー戦隊物に類似しているし、マチズモな男ばかりじゃなく勇気ある頭脳派の学者も登場する。
お約束にお約束を重ね、更に節々に意外性のエッセンスを注入することでこの作品は頭一つ抜きん出ているのだ。
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