キッチー

眠れる美女のキッチーのレビュー・感想・評価

眠れる美女(2012年製作の映画)
3.6
2009年2月に北イタリアのウディネの病院で死亡したエルアナ・エングラロさんの延命措置停止事件を基に、類似する3組の話を交えて、問題を伝えてくれる作品。

バチカンの強い影響下でほとんどの国民がカトリック信者であるイタリア。カトリックは自殺や安楽死を認めない立場であるが、そんなイタリアの最高裁で交通事故で延命治療をしている女性の栄養補給管を外すことを認める判決が出る。政権はバチカンへの忖度や国民へのアピールから、病院に対し補給菅を外させない政令を出そうとするが、政権内にも従わない人物がいたり、ギリギリのところで補給菅を抜かれてしまう。

この映画では、関連するような3つの物語で、この論争を分かりやすい形で教えてくれる構成になっていて政治的な側面から、社会的な側面から、そして宗教的な側面から、色々な考えが喚起される作品になっていると思います。

議員であるウリアーノ(トニ・セルビッロ)が植物状態の妻に対する話では彼の深い悲しみと妻への愛情の深さを...
大女優(イザベル・ユペール)が自分の人生を娘の介護に捧げてしまう話では、家族の負担(経済的な負担以外にも精神的な部分、残された家族の時間まで止めてしまう)の大きさを...
自殺志願者の女と医者の話では絶対に自殺を許さないという倫理観や医者の使命感を...
それぞれ表現していましたね。

意識すら回復する見込みのない患者に寿命を超えた延命治療を施すこと。人間らしく寿命で安らかな死を迎えさせること。対立する2つの考え方のはざまで苦しむ人がいる。ここまで究極の状況に陥ってしまうとカトリックの教義は救いよりも足かせのようできついな~と思いました。
信じる宗教の違いで尊厳死に対する考えに強く影響するのも解りました。

いずれにせよ、無宗教の日本人である私にはなかなか難しい問題でした。イザベル・ユペールが出てなかったら観なかった映画。でも、観て良かったです。
キッチー

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