岩嵜修平

ぼっちゃんの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

ぼっちゃん(2012年製作の映画)
3.2
タイムリーに鑑賞。
個人的に、大森監督作品自体が苦手なので、作品の評価は置いておいて、間違いなく世の中に存在している問題を切り取ったということだけでも、作った価値はあると思う。
実在の事件をベースとはしつつも、完全なるフィクション。事件の犯人をモデルとしたであろう主人公には、事実と異なる肉付けがされ、より同情できる余地を持たせている。(とは言いながら、侮蔑的な視点が見えるところが大森監督作品の苦手なところなのだが。。要するに、登場人物に愛が感じられないのだ)
主人公以外の人物は、対比しやすいキャラクターが極端な形で表現され、現実感は無い。
伝えたいメッセージや、ゴールがあって、そこに向かうために作られたキャラクター。
だから、物語としての面白みはない。ひたすらに、嫌な気分になっていく。

ただ、ここまで極端ではないにしろ、主人公の梶のような存在は確実に、この日本に居る。
何をしても上手くいかない。それを全て他責にしてしまう。自分から変わっていくことが出来ない。
最近、アドラー心理学の本を読んでいるのだが、そこでは、自分を変えることが出来るのは自分だけだと語られる。
梶を、そして、恐らく、あの事件の犯人を変えることが出来たのは彼自身だけ。
では、こうした現実を前に、私達が出来ることは無いのか。
それは、彼が救いの手を求めてきた時に、手を差し伸べてあげること。救おうとするのではない。他者を変えることは出来ない。
彼が、彼自身のテリトリーの中で、自己解決することを肯定してあげることなのではないか。

こんなことを考えられただけで、観た価値はあった。
岩嵜修平

岩嵜修平