ringrintaro

火車 HELPLESSのringrintaroのレビュー・感想・評価

火車 HELPLESS(2012年製作の映画)
3.3
宮部みゆきのミステリー小説『火車』は傑作だと思ってる。で、彼女の『スナーク狩り』の解説だったと思うが、誰かが「(ゲームオタクの宮部みゆきは)映像化不可能なものを描こうとしている」とか何と書いていたと記憶している。
宮部みゆきが本当にそういう意識で書いてるのか分からないけど、『火車』はまさにそのような作品だろう。

あれは、最後の最後にしか登場しないヒロインの新城享子を追い求める過程で彼女への妄想をひたすらに掻き立てていく小説だ。
そしてそれは文学だからこそ可能なものと言えるだろう。
あれをそのまま映像化しようとするとそもそもの映像化意味そのものが怪しくなってしまう(映像によって現実味を与えてしまうと妄想は引っ込むし、証言や証拠だけでは映像として退屈)に違いない。

そういう意味で、基本の設定とアウトラインを同じくした「別物」として仕上げた韓国映画版『火車』は賢いし中々面白い。
ヒロインを探す婚約者の感情表現はちょっとウザいが、これを重要なのは、「一緒に過ごした時間か?それとも過去か?」という“愛の物語”に設定したのは成功と思う。
ringrintaro

ringrintaro