幕のリア

まぼろしの市街戦の幕のリアのレビュー・感想・評価

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)
4.6
戦争と平和。
暴力と友愛。
正常と異常。
ケとハレ。

祝祭的空間を見事に描き切った名作。
ホドロフスキーとも、フェリーニとも異なる、かと言ってフランス人ならではのスノビッシュな切り口とも異なる。

作中にたゆたうのはsense of humorと言うよりも、絶えず微笑みを浮かべたような優しい視線と静かな怒り。

勿論戦争という暴力装置に対する深い哀しみが時折滲み出る。
あまりの惨状に全員が我に返り、衣装を脱ぎ捨て、演劇を終えるかのように元いた場所に戻り、錠を掛けるシークエンスには観る者に冷や水を浴びせかけるかのようだ。
エンディングは魂の解放による幸福を仲間がいてこそと感じさせ、静かな感動を呼ぶ。

リマスターによる美しい衣装と色彩。
フランス北部の田舎町の素朴だが歴史を感じさせる情景。
第一次大戦時の軍服の古臭さ。
スコットランド兵たちの壮観だが愛らしいキルトスカート。
ハートのキングの凛々しき姿。
そして何と言っても黄色いチュチュをまとったヒロイン・コクリコの無垢でキッチュな美しさ。
映像作品としてのヴィジュアルの素晴らしさは枚挙にいとまがない。

〜〜

ラピュタ阿佐ヶ谷に続きユジクでも会員証発行。
今年も旧作スクリーン通いが増えそう。

2019劇場鑑賞2本目
幕のリア

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