旅するランナー

ホーリー・モーターズの旅するランナーのレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
3.8
【サージェント・カラックス・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド】

北中正和著「ビートルズ」(新潮新書)を読みました。
ビートルズはなぜ誕生し、どのように成功し、どれだけ世界に影響を与え、伝説になったのか?
それらの要因を歴史的·地政学的·文化人類学的に考察します。
っていうのはちょっと大袈裟ですけど、様々な音楽から影響を受けてバラエティー豊かな楽曲を生み出したビートルズの革新性を改めて学べます。
今で言うワールド・ミュージックの先駆けです。
確かにロックから、黒人音楽、インド音楽、カリプソ・ラテン、ブラスバンド、クラシックまでを吸収し、ビートルズ音楽にした才能はすごいの一言です。
アルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」なんて、その最たるものです。

さて、カラックス監督による、この作品は映画版サージェント・ペパーズと言いたくなります。
一人の男が自ら特殊メイクをしながら、様々なシーンを演じていきます。
多種多様な映画を、カラックス風味に味付けして、とてもシュールに描き出します。
とってもカラックス劇場。
現実と幻想の境目すら分からなくなります。
大型リムジンに乗った、マジカル・ミステリー・ツアーです。
観客は置いてけぼりをくって、ちょっぴりロンリー・ハート気分になるくらいです。

また、パリの美しい風景も見どころです。
美しさは瞳の中にあるみたいなセリフもありました。
サマリテーヌデパートが廃墟のような形で出てきます。
ここで、カイリー・ミノーグがミュージカルやります。
2005年6月に休館して、2021年6月に営業再開しています。
ちなみに、ポン・ヌフ橋のたもとにあります。

スティーヴ·ジョブズの残した言葉に「人生で起きることの大半は、ボブ·ディランかビートルズの歌にある」っていうのがあります。
まんざら大袈裟でもないように思います。
まあ、「人生で起きることの大半は、カラックスの映画にある」とまでは言い切れないですけど...