回想シーンでご飯3杯いける

パコと魔法の絵本の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

パコと魔法の絵本(2008年製作の映画)
4.1
「下妻物語」でのアニメ導入や、「嫌われ松子」での極彩色エフェクトなど、現実を逸脱した映像表現を得意とする中島監督が、今度はCGと実写の融合に挑戦。

記憶が1日しか残らない少女、パコと奇妙な入院患者達(大人)の心の触れ合いを描いた感動作なんだけど、オーバーアクションな演技や俳優の魅力を殺している(ように見える)特殊メイクの連続で、冒頭部分は全くわけが分からない。ところが、20分を過ぎたところでパコが登場して、映画の雰囲気が一転。ささくれ立った大人の心に響くパコの無垢な笑顔に癒され、ここで没入度が一気に上がる。

この"20分"という絶妙な設定は、以前のレビューで書いたとおり「下妻」におけるイチコの登場タイミングと全く同じだ。派手な映像表現の陰に隠れがちだけど、中島監督はこういう演出の基礎をしっかり構築出来る人なのだと確信する。

映画は後半になるにつれ演出が派手になり、現実と過去、空想が入り混じる独創的な世界に突入する。それはまるでリアル絵本。ティム・バートン的空想世界をピクサーが映像化すればこんな感じになるのかもしれない。

絵柄は子供向きに見えるが、そのメッセージは大人に向いている。キャッチコピー「子どもが大人に、読んであげたい物語。」はまさに絶妙。