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タイガー 伝説のスパイのくりふのレビュー・感想・評価

タイガー 伝説のスパイ(2012年製作の映画)
4.0
【私を愛しぬくスパイ】

ハードなスパイ・アクションのふりをして、実は軟派な所が気に入りました。作り手は心の声に従ったのでしょうか(笑)。また結局スパイを否定しているのがいい。理想論ですが、確かにスパイが不要なのは平和の証。

印パの緊張や厭戦気分の影響とも思いますが、スパイダメ!の向うから伝わるそんな願いに、とり急ぎ共感しちゃいました。

口ぽかんハイスピード撮影での蹴りの向うから、凄まじい見栄の切り方で登場した後、サルマーン・カーンの、男くさい魅力は笑っちゃうほど炸裂しますが、身体の重みを生かした、接近戦のアクションに説得力がある一方、タイガーというスパイを手放しでカッコよくは描いていないですね。カバンのたすき掛けなんて007じゃ絶対やらないだろうしね(笑)。

謎のイケメンとして噂になり、近所であの人仕事何やってんのかしら?なんて探られる辺りもダメスパイじゃん!てツッコミたくなります。逆に組織のボスと仕事帰りに家でごはん…なんて、インドのスパイは家庭的だなー(笑)、と和める辺りがとてもいい。

タイガーのカッコ悪さは、国より自分のために闘うことに繋がりやすく、そして闘いより愛を先んずる物語の転調にもすんなりとノレてしまいます。アクションより猛烈ヒートする見つめ合い!しかし惚れた腫れたで印パを揺るがすってスゲエ!…スゲエ迷惑野郎(笑)。本作ひょっとして、セカイ系ラブストーリーだったりして!? (驚)

諦観を含むような願い…で物語が終わるのは切ないけれど、ちょっと弱いかな。どうせなら、両国和解への愛の爆弾…愛のテロリストになって反撃するところまで突っ走ればよかったのに。「正気の愛、それは愛じゃない」なんて途中で注釈ワード出してるし(ハバナの壁画)。あれは詩人ホセ・マルティの言葉だそうですね。

カトリーナ・カイフさんは、『命ある限り』より、フランクで少し漢っぽいこちらの方が合うと思った。表情もあちらより豊かだし。Gパン姿のアクション、なかなか様になっていますね。タイガーがなぜ彼女なら心の声に…というのは結局、よくわからなかったけれど(笑)。

ボリウッド定番のダンスは、スパイをパロディにさえしているからか、ダンスシーンもそうしているのがいっそ、気持ちよかったです(笑)。自信があるからこそできたのでしょうね。

逆にエンドロールでは、解放されたように存分に踊っていて単純に楽しかった。ここでのカイフさんはむっちゃエロくて素晴らしかったですわん!

<2013.7.8記>
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