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スノータウンのarchのレビュー・感想・評価

スノータウン(2011年製作の映画)
4.0
『NITRAM』や『トゥルーヒストリーオブケリーギャング』等の傑作を手掛けたジャスティン・カーゼル監督の初期長編作品。
「スノータウン男女12人猟奇殺人事件」を題材としてジェイミーという少年が、如何に猟奇殺人に加担していくことになったのかを描く。
ジャスティン・カーゼルは本作を初めとして、実在の凶悪事件を題材に、その心理的な動線を描くことに注力する。本作においても、心優しき少年が家父長制的な環境によって、トキシックな男性性に狂わされていき、自分の兄弟を殺すまでに至った様をまじまじと描き出している。
彼の作品の主人公は、究極的に言えば犯罪者であり、極悪人である事は間違いない。だがその彼が生まれながらにして"悪"として描いたことはない。主人公をその行為に至らしめた環境ないし、状況を必ず描くのだ。そこには、性善説的な考えがあるだろうし、何より殺人鬼を対岸のフィクションにしない誠実さがある。

本作は彼が向かいの家に住むおっさんにレイプされるところから始まるが、彼を本当に意味で精神的に犯していたのは、間違いなくジョンであり、それは他者には分かりづらい見えない傷としてしか残らない。

人物関係が非常に説明不足で下手ではあるが、初期から一貫されたダークなテイストの映像と描くテーマに対する真摯さ、大好きな監督の一人です。
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