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チャット 〜罠に堕ちた美少女〜の先生のネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

たまたま見かけた時は、面白そうだなと感じたが、邦題がなんかエロ系だったので、見るのをやめたが、ツイッターで真面目な映画だと知り、改めて見た。

ドラマとして面白い、というか、被害者と被害者家族にクローズアップする題材として興味深いというか、壊れたものをどうやって再生していくか、犯罪者はどんな手口を使ってくるのか意義深いというか。

父親はダメダメだと思う。めちゃくちゃダメダメってわけではないが、どうにも悪手というか、地雷を踏んでいくのがじれったい。しかし教訓としては良い流れ。

娘にどうして相手が嘘をついた時に相談しなかったのか、実際会った時に父親の自分に電話しなかったと責めるのが悪手すぎる。この父親は娘が大事であるが、ある種、娘を自分の所有物のように捉え、つまりそれは自分の一部として捉えて、自分事のように傷ついているわけだが、同時に、傷ついたのは娘であり、娘が悪いと責任を擦り付けて自分を慰めようともしている。ダメすぎる。
ここで考えるべきは、FBIが言ったように娘を支えること。どうやって支えるか、娘のことを考えて、娘になったつもりで慰めること。終盤、娘が「レイプされたのはパパじゃないし、高校で笑い者になってるのもパパじゃない。1秒ごとに思い出させないでくれ」というが、その通りで、そこからようやく、父親は娘と自分を切り離せるようになったと思う。犯罪者を捕まえたいし、娘に元気になってもらいたい。しかし、父親のとった行動はだいたいが間違っている。方向性は良いが、それじゃあダメだよと言いたくなる行動。そんな行動をとってしまうのはわかるが。

この映画で面白いなと思ったのは、おそらく広告代理店に勤めてる父親が宣材の写真を眺めるところ。半裸のモデル達。アパレル商品を紹介するわけだが、ヌード的にも見えるような構図になっている。性的消費を掻き立てるものを父親は扱っている。また、妄想として男が娘をレイプするシーンがちらつく。この父親は潜在的には娘は自分のものであり、それを汚されたと感じてもいるし、さらに踏み込めば、娘をレイプしたいという願望も知らずに持っていたかもしれない。自分の支配下に置きたいという欲求の表れとして。だからこそ、娘の身に起きたことが自分事のように反応して荒んでいくんだと思う。

また、仕事に手がつかず、同僚に諌められ、その理由を正直に話した時の反応も良かった。同僚は「なんだ、痴話喧嘩か。恋人同士のいさかいか」というような反応をし、父親は言葉を失う。それに気づいた同僚は取り繕うように「まあ悪質なのもあるかもしれない」と続ける。
世間ではレイプと見なされないというギャップを父親は感じる。父親としても、これは娘に対して犯人がやったことは潜在的にみんなが持つ欲望かもしれないなという気付きを得るし、自分の痛みを理解されないという娘と同じ体験をする。良いシーンだった。

あと好きなのは最後和解として、父親と娘が抱き合うところ。父親は娘に泣いて「許してくれ」というがすぐに「許さなくていい。謝りたい」という。良いシーンだ。傷つけたことに謝りたいが許すか許さないかは娘に委ねるのがすごく良い。ここでようやく、父親は娘と同じ痛みや不理解からの苦しみや被害を受けたと認めるための葛藤を得て同じ境地に至るというのが良かった。

そして最後のビデオ映像。
まさか教師だったとは。子持ちだったとは。みんなから慕われ愛想の良い人格者のように振る舞える男だったとは。
映画では犯人は捕まらないが、犯人像として提出するには最高に良い演出。
ひとつの作品として部分がとても真摯で誠実だったと思う。父親の暴走も娘の不安定さもリアルで良かった。

邦題はクソすぎる。エロいかも、という期待をうかがわせる邦題なのはこの作品への理解が足りなさすぎると思う。いやでも、そんな期待を抱く奴らに、お前らのこと見てるからな、というメッセージを突き付けるには良いかもなとは思う。
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