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ニトラム/NITRAMの先生のネタバレレビュー・内容・結末

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

公開当時、話題になっていたので楽しみな反面、見るのが憂鬱だった。銃乱射事件の話だと知っていたので、どんどんそっちへ進むのを止めたい気持ちになった。トロッコ問題。

これは完全な善でも正論でもなく、一種の戦略であるが、自分に不都合な存在からは離れれば良い、関わらないようにすれば良い。社会的に問題がある人間は刑務所のように隔離すれば良い、排除されれば良い。
ニトラムの彼はその手前で疎まれてきた。うまく生き抜くことが出来なかった。どうすれば良かったのか。

自分個人の感情としては、マーティンとは関わりたくない。だるいし疲れる。
しかし、社会としては彼には生きていて欲しかった。銃乱射事件なんて起こして欲しくなかった。彼の父親だってそうだ。

人間社会の限界の結果の事件に見えた。決して一人の人間の頭がおかしくて、一人の人間が悪いせいで起きたわけじゃない。

ヘレンと母親の会話が良かった。
母親は「マーティンはあなたの夫?それとも息子?」と詰問する。
ヘレンは答えられない。
ヘレンは「マーティンは優しいし思いやりがある」という。それに対して、母親はマーティンの子供時代の思い出話をする。マーティンと布屋に行くとマーティンがかくれんぼをする。いつもはすぐ見つかるが、その時は見付からなかった。店中を探して人にも聞いたが見付からない。1時間たっても見付からず、警察に行こうかと半泣きで車に戻ると、笑い声がする。「母さん、驚いた?」
ヘレンは言葉を失う。

どうしたって相手が望むように振る舞えない瞬間はあるが、それでも人はこれくらいはわかってくれるだろう、大丈夫だろうと思ってしまう。マーティンはそれをいつも踏み越えて疲れさせる。疲れさせる自分にもうんざりもしている。
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