上海十月

愛のコリーダの上海十月のレビュー・感想・評価

愛のコリーダ(1976年製作の映画)
3.4
藤竜也のなすがままで消えていきそうな演技が見事だ。
フランス版DVDにて鑑賞。しかし日本のDVDの特典は、酷すぎる予告編くらいしかない。日本映画のDVDの海外版を観ているその充実ぶりはすごいし、外人が取材に来るのでテンションが高いのか関係者がいろいろしゃべる。このフランス版も崔洋一、亡き若松孝二、フランス側担当者のコメントが凄い。観ながらかなりふわふわした製作環境で作られている。なにせ日本で現像できないから誰も観てない。大島渚は、坂本龍一が言う通り日本の映画監督の中では一番絵心がなく映画監督になった人で、どのシーンも撮影監督伊東英男と美術の戸田重昌が画面で異彩を放ってるので観てられるのだろう。大映京都で撮影しているので美術の黒光りが凄い。大島渚は、ただただ日本のタブーに挑戦してセンセーショナルを巻き起こすことのみにこの映画を作ったんではないかと思われてもしょうがないような映画だった。修正版も観たこともあるのですが今回のフランス版でようやく大島渚の意図が分かった次第です。とにかくハードコアポルノを日本で撮影してフランス現像するという官憲の目を潜り抜けるという映画でもあるような気もしますね。藤竜也がこの映画の話の筋を一番理解し消えていくように演じて印象的ですが、定を演じた松田暎子は、今一つの演技で印象に残りませんね。いくら体を張っても、そうまでして本番しなければならないのかという疑念が生まれますね。田中登監督の「実録・阿部定」の宮下順子の方が映画として成立している気がしますね。やはり、大島渚は、活字の人でタブーを描く人物なんだと思いました。でもこの作品から物語に向き合いだしたと個人的に思います。
上海十月

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