Saaaaa

ペトラ・フォン・カントの苦い涙のSaaaaaのレビュー・感想・評価

5.0
支配関係開始の合図は「私は孤独である」「居場所が欲しい」。

こんな普遍的でどこにでも居そうな怠惰な女が自分にとって替えのきかない特別性をもつものになってしまう。この様に漬け込まれた女は自分が特別なものになってしまったと勘違いをし、高飛車な女に成り上がる。そうすると口調から態度まで全て高慢になり支配的な性質が彼女の中に現れてしまう。そして、私が私の力で得たものは私が壊しても良いからと思い相手を粗末に扱おうとする。

惚れ込んでしまった側は相手の容姿だとか行動だとか相手の表面的なものだけがよく目につき、相手の内面については内面の真偽はどうでもよく盲目なあまり相手はたとえ普通であろうと腐っていようと素晴らしいものである、と自分の中で作り上げたイデアを相手に埋め込もうとする。彼女を好きなのではなく、彼女の実存が好きなのである。そして彼女を自分の近くに所有することか彼女との間に成り立つ関係性に名前をつけることを欲する。

支配するされるで成り立っている関係性のなかで愛の実在や自分の存在についての価値だとかに意味を問うてしまうと終わり。

支配関係に終わりを迎えついに自分に対して愛が向けられたときに、実は平等の立場にいたかったわけではなく相手を所有し所有されたかっただけだと気づく。



愛してしまうと何度も何度もはっきり「愛してる」って口からこぼれてしまうのめちゃくちゃわかる。それに本当に狂うほど好きになると謙虚では居られなくなるのも。

ここまで精神を使わせたり狂わせたりしてしまう愛の魔力ってなんなんだろう。
Saaaaa

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