Torichock

私の男のTorichockのレビュー・感想・評価

私の男(2013年製作の映画)
3.9

昨年の夏に公開された、瀬戸内寂聴さんの自叙伝を映画化した"夏の終わり"は、初見時には微妙な感想だったんですけど、じわじわと胸に残る作品に変わり、今ではとてもパーソナルな一本になりました。
本作も、同じ熊切和嘉監督がメガホンをとり、熊切作品は3本目の鑑賞になりました。早くも今年ベストがほぼ確定してる"そこのみにて光輝く"の原作者・佐藤泰志氏の著書"海炭市叙景"の映画も熊切監督なので、それも見てみたいです。

もうはっきり言って、二階堂ふみがすごいんで、二階堂ふみがとんでもないんで、二階堂ふみなんで!演技の云々は割愛します。とりあえず、二階堂ふみが好きなら観た方がいいと思います。僕は、どちらでもなかったですが、本作で好きにもなった女優でもあり、もう怖くて距離を置きたくなった女優にさえなりました。ガクブル...

なぜか?
それは、女の執念とも呼べるほどの欲望を、二階堂ふみが強烈なキャラクターで演じ切ったからだと僕は感じました。ガクブル...

恋愛について、ここ映画を見た後に感じたこと調べてみたんです。
そしたら面白い文献を見つけたので、そこから引用した感想なんですが...
男という生き物は元来、外に狩猟をしにいく本能を持ち合わせていて、女はそれを待ち包み込む本能、いわゆる母性というものがあるらしいんです。
そして、恋愛というものは与え合えるものこそが、お互いにとって幸福をもたらすものだというのが、一般的なものらしいんです。
でも、
なかには
与えられるよりも、奪うことで愛を感じる性質もある。
特に、そういう女は一人の男から、全てを求める
というようなことが書かれていたんです。
そして、女の欲求に対する執念は、男の想像をはるかに凌ぐと。

ここからは僕の感想です。
本作の浅野忠信が演じた純悟という男は家族がいない男、つまり無条件に誰かに包まれたい、血の繋がった愛情、いわゆる母性を求めていたと思うんです。そのためなら、倫理や常識をも省みないほどに。
そして、二階堂ふみが演じた花も津波で家族をなくし、誰かに必要とされたかったのように思えたんです。
さみしさを抱えた二人、この二人の需要と供給はバッチリ合ったんです、合い過ぎたんです。

純悟はきっと、花に与え続けることだけが生き甲斐になっていたと思うし、花に与えることで逆に花の持つ母性にドップリと漬かっていたと思います。
だけど、違うんです。純悟が与えてた以上に、花が奪い続けていたんだと、僕は思うんです。
もちろん、ギブ&テイクの関係なんだけど、花という女性が持つ、与えさせるチカラの作用はすごいものだと思います、狂気を感じるほどに。

なぜか?
僕は、自分の欲しいものに欲しい!と言える女性って、絶対的に魅力的だと思うんです。"アデル、ブルーは熱い色"でも言いましたが、人間の三大欲求を満たしてる人が魅力的に見えないはずがないんです。
よく食べてよく眠りたくさんSEXをしたがる女性が魅力的なのは、僕は当たり前だと思うくらいです。
そして、そういう女を満たそうと男は狩猟にいき、こう思うんです。
"おれが、おれこそが彼女を満たすことができるんだ"と。そして、自分以外の男には、"お前には無理だよ"と。

でも、"全部、わたしのもんだ!"と叫んでしまうくらい欲の強い、花のような人に全てを奪われ、枯れてしまうんです、ガクブル...

最後のシーン、聞き取れない声で呟くセリフがパンフレットにだけ書かれていたんですが、正直ゾッとしました。
今までここまでしてきたのに、それも求めるのかと。
さすがのタイトル、"私の男"だなと思いました。

とまぁ、いつも以上に長くなったので、絶賛かと思いきや、ビックリするくらいら間抜けな演出が一個あったりと、ダメなところはダメでしたね。
助けてぇ〜って!気付くの遅くね?

でも、流氷のシーンは現地ロケということもあり、圧巻でした。
重いし、苦しいし、演出変なところあるし、高良健吾を無駄遣いしやがったし、文句はあるんですけど、物語は本当に素晴らしかったし、原作読みたいなと思いました。高良くんの件は、あれはあれでなんか面白いんですけどね。ただ撮影や音、役者陣の演技などは素晴らしいので、熊切監督は今度こんな冗長なことを繰り返すとなると、いい加減見切りつけられると思いました、豚の餌だっ!

何より、男と女という本能を、生々しく描いたと思いますし、純悟お疲れ様!の思いも込めて、僕は鑑賞してよかったと思いました。
時間経って、好きになる映画かなぁ。


あっ、物語は素晴らしかったと言いましたが、かなり性描写や話は気持ち悪いものですので、吐き気を感じるくらい嫌いな人もいると思うんで、注意してください。

(2014.6.28)
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