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ラストタンゴ・イン・パリのbirichinaのレビュー・感想・評価

ラストタンゴ・イン・パリ(1972年製作の映画)
4.5
愛する女(妻、ほかの男とも関係を築いていた)に自殺された中年男の悲しみや虚無感を、まだ30歳そこそこのベルトリッチが体験もなく描けたのだとしたら、脚本家として絶賛したい。

物議を醸したバターセックスシーンは、「彼女の演技ではない、本物の屈辱感のリアクションが欲しかった」そうだが、裏を返せば、そういうことをされた時のヒロインのリアクションが想像できず演出に自信がなかったということでは? そうでなかったとしても「思いがけない方法でブランドが襲いかかってくるから、感じたままに演じてくれ」的な説明をするのが、演出家としての筋だったのでは? それくらいはしたのだろうか。。
個人的には、このヒロインの立場なら恐怖は感じても屈辱は感じないと思う。幼い頃に大好きな父親を亡くし、それが心の傷となっていてブランド演じる中年男に惹かれていると思うから。いずれにしても演出家としての対応はマイナスだから、監督賞をもらってないのが幸い。

週刊誌「L’Espresso」のベルトリッチのインタビューによると、主役はJ・L・トランティニャンを想定していたが、ヌードは勘弁してと断られたそうだ。続いてJ ・P・ベルモントに門前払いされ、A・ドロンは「OK、でもプロデューサーもやらせろ」と言ってきたので話がまとまらず、ブランドに持ちかけたとのこと。ブランドは「暗殺の森」を見てOKしたそうだ。
ヒロイン役はドミニク・サンダの予定だったと何かで読んだことがある。トランティニャンxドミニク・サンダだったら、まったく違う感じの作品になっていただろう。
個人的にはブランドのワル的な魅力や色気やカリスマ性、マリア・シュナイダーのおバカな女の子的な雰囲気が作品にピッタリだと思う。トランティニャン、断ってくれてよかった〜。
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