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まだ明日があるのbirichinaのネタバレレビュー・内容・結末

まだ明日がある(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

【ご注意】作品を観る前に読むと感動が薄れます。

随所にコメディタッチを交えながら深刻なテーマを描いていて名作といえる作品だった。
細かいことだが…イヴァーノは選挙に行かないのだろうか? マリーザや3人のご近所さんたちは? お金持ちの家のご婦人と洋品店の女主人は日曜に選挙に行こうと土曜の夜に準備しているみたいだったが月曜に行ったのか? 秘密の計画が選挙に行くことなら、マリーザに「何考えてるの?」と聞かれた時「あんたには言えない」なんて言うのはなぜなのか? などが気になったが、総じて脚本はすばらしかった。演出も俳優も最高!
・特に夫が主人公に暴力を振るうのをミュージカル仕立てで描きつつ見ている者を震撼させるシーンは、イタリア映画史に残る名シーンになると感じた。
・小道具としての口紅の用い方が効いていた(夫や恋人の言いなりで口紅をぬぐい取られるシーンと自らの意思で口紅をぬぐい取るシーンの対比)。
・夫のDVが戦争に2度従軍したせいだけでなく、父親の影響だと分かるシーンは2人の息子の行く末を想像させられゾッとした。妻を愛しているのにDVをしてしまう夫が哀れでもあった。
・主人公は決してかわいそうな女性ではない。DV夫をうまくあしらい、へそくりを貯め込んで、娘のフィアンセがDV男だと知ると米兵を利用して結婚話を破談にする。義父の死を見てみぬふりする。虐げられた状況の中でも強くたくましく生きるのが女性はうまいのだと思った。
・最後のほうの外階段で夫と対峙する主人公のシーンで、2013年の楽曲“A bocca chiusa(口を閉じたまま)”(路上ストへ行こう/俺は抵抗の歌を歌う/舌を切られても口を閉じたまま歌い続ける/俺の後ろには何人もの同志たちが口を閉じたまま声を上げている というような歌詞だった)が使われているのは、現在も男どもや社会による女性や弱者へのハラスメントは続いていて、それを見過ごしてはダメだというメッセージだろうか?
・前半のデリアが注射を打ちに行くお金持ちの家の娘たちの下の娘は、パオラ・コルテレージの娘と思われる。

・選挙に晴れ着を着ていくという発想が全くなくTシャツにサンダルで行ってしまう自分が薄っぺらい人間に思えた。

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