Bobsan

蝿の王のBobsanのレビュー・感想・評価

蝿の王(1963年製作の映画)
5.0
僕は漫画にはあまり詳しくないのですが、梅図かずおの「漂流教室」はおそらく、いや間違いなくこの作品が元になっていますね。
空襲に見舞われたロンドンから集団疎開する少年たちを乗せた飛行機がとある無人島に墜落。生き残った少年たちがサバイバル生活を送る中で次第に対立が生まれ、やがて殺人にまで発展してしまう狂気が描かれます。
あくまでも理性的な立場を保とうとする主人公のラルフに対して、徐々に己の獣性を剥き出しにするジャック。このジャックが聖歌隊のリーダーで、『キリエ・エレイソン(主よ、憐れみたまえ)』と歌いながら登場するところが、皮肉が効いていていいですね。おそらく彼は敬虔な(狂信的な)カソリック信者の家庭で育ったのでしょう。その抑圧された生活から一気に解放された反動で理性が崩壊し、野蛮でおそろしい本能が解放されたのだと思います。顔と体にペイントを施し、焚き火の周りで奇声を上げながら踊り狂うジャックと仲間たちの恐ろしいこと。
やがて現れた海軍の救出部隊を前にパンパンに膨れた風船が一気に萎んだようにおとなしくなって助けを求める姿に何とも言えない哀しさ、情けなさがあって少年たちの胡蝶の夢は終わりを告げました。
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