くりふ

マレフィセントのくりふのレビュー・感想・評価

マレフィセント(2014年製作の映画)
3.0
【けっきょく悪は悪のまま】

後から知りましたが、製作はジョー・ロスなんですね。アリスやスノーホワイトやオズをバトルモードで改悪してきた人。それじゃ新たな面白さなんて生まれる筈もないか…とこのどこか寒い仕上がりには納得。

今回はバトルに泣きも加えてきたわけですが、魔女の心に諧調を入れたぶん、悪役を絶対悪に仕立ててしまい、結局は勝ち負けの話でお安くまとめてしまった。

そもそも、人間の国と妖精の国、なぜ仲が悪いのかを全然教えてくれない。そこを掘り下げないから結局、殺し合いで感情移入しやすい側を残してハッピー、と言うしかないのでしょう。また違う国が攻めて来たら同じことの繰り返しでしょうね。悪い魔女が悪い王様に変わっただけ。

大人向けなら人間なんて、と割り切れるけれど、子供向けとしてこれで本当にいいのだろうか?

真実の愛のキス…まさかそれはないだろうと思ったことが起きて唖然とした。この「ディズニーラブ」、解釈がアッチの映画とまったく同じじゃん!

でもこれって、当たり前のことじゃないの? 普通に生きて人と触れ合えば感じるもので、わざわざ映画で盛り上げるようなことか?

『魔法にかけられて』と同様、ディズニー過去資産に対するアンチだから辛うじてセーフ、のアイデアだとは思います。でもこうあからさまだと、過去のアレやアレは嘘のキスかい? と苦笑してしまいますね。

アンジーはいつも通りふつうにアンジーしてました。はじめのつつ翼が翼が!のシーンなんて役者としては見せ場でしょうが、あれじゃ誰が演じても同じじゃないかなあ。役者としての彼女には、もう興味ないなあ…という段階に入ってしまった。

一方、エルちゃんはプリンセスらしからぬ田舎娘みたいなピュアネスが溢れわりとよかった。と、王様シャルートは『第九地区』のあの胡散臭さ炸裂!という感じで後ろ向きにすごく嵌っていました。…大嫌いです!(爆笑)

そもそも、マレフィセント(maleficent)って、悪事を働く、害をなす、悪意に満ちた、という意味だそうで、絶対悪の象徴として名付けたのだと思います。

妖精の国では違う意味になる、という設定があるのかもですが、人間からすると親が娘にダース・ベイダーって名付けたようなもの。タイトルがこうであるところに、よくも悪くも本作の限界が透けているように思います。

<2014.7.22記>
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