皿と箸

ビル・カニンガム&ニューヨークの皿と箸のレビュー・感想・評価

4.5
この作品でドキュメントと言う物の認識を改めました。

対象となる人物が魅力的であると同時に、編集も単なる記録としてではなく物語性と娯楽性を演出しているとここまでたのしめるのかと。まるでコメディ見てるみたい。

多くの人にとってファッションはほんの些細な生活の一部であり、生き甲斐とするには甚だ日常的すぎるのかもしれない。しかし日常的だからこそ考え方一つでそれは人生を楽しむツールとなる。

ビル•カニンガムさんはそんなファッション界に人生を捧げた人。彼自身の質素な生活ぶりとあまりに華やかなファッション界の日常との対比が人々の興味を引く。

彼はよく変人扱いをされるらしいが、彼のポリシーを聞いていくといつの間にかどちらが変人なのかが曖昧になってくる。

彼の生き方は自分の興味のある事には全力、ない事にはほとんど注力しない。余計な事は考えない、好きな事を仕事にして思い切り拘る。それが清々しい。

彼自身はストリートスナップと言う手法でモードとストリートを繋ぎ合わせると同時に人々のライフスタイルや文化をアーカイブとして時代の変遷を切り取っている。さらにその人となりから人生の先輩としての教訓や理念の様なものを得ようとカメラは迫る。

何より彼は映画内ではほとんど常に笑っている。それがこの映画を素晴らしくさせている1番の要因なのかもしれない。

誰だって気取らず自分らしく日常を全力で楽しんでいる人を見るのは気持ちの良いものだ。
皿と箸

皿と箸